行くたびに何かが起こる盛岡地裁刑事部の、本日の出来事である。

【身体検査】
入り口に手荷物検査機のない盛岡地裁は、未だに個別の身体検査を要求する。
依頼者の意向で身体検査を拒否しなかったが、裁判所職員曰く「弁護人に立ち会って欲しい」と。違法な身体検査に付き合う気は無いと断ると、一旦は身体検査が中止になってしまう展開に。最終的に「裁判所の判断で実施するので了承して下さい」と言われたが(当然、弁護人限りでは拒否した)、果たして弁護人に依頼者の身体検査の了承権があるのだろうか。「共犯者」にされかねず不愉快である。

【身体検査2】
裁判長は、在宅の依頼者に対し、「全身が見えるところに座るように」と指示し、弁護人より法壇側に座るよう、要求した(前回と異なり、事前に申し入れてあったためか、SBMの椅子が用意されていたこと自体は評価したい)。「常に全身を見ておきたい、足下まで見えるように」とのことである。
謎な訴訟指揮であるが、正式な命令が発動されたので、従った(ただ、その着席位置では尋問が困難なので、私は更に法壇寄りに着席し、ほぼ修習生と接触した)。
あとから確認したところ、その着席位置ではどうしたって足下は見えなかったし、尋問に集中していては被告人の全身観察どころではなかろうに、と思う。無意味な権威主義に映る。

【誹謗中傷】
前記、着席位置の「御願い」を拒否したところ(最終的には正式な命令に服した)、裁判長は聞こえよがしに「弁護人が法廷警察権に従わない可能性がある」と発言したので、当然に抗議し、撤回させた。
御山の大将と言わざるを得ず、その言葉はとても軽い。

【電源使用問題】
盛岡では、電源は許可制だとのことである(かの堀内氏が所長を務めておられた経過があるので、同氏の名古屋地裁流が導入されていても驚かない)。
机や椅子と同じく、いちいち許可を要する問題ではないと無視して使用していたが、必要性を説明しろとしつこく絡まれたのにはうんざりした。「弁護のため」というと「許可します」という。全く生産的ではない遣り取りであり、やはり権威主義的でしかない。このようにした権威付けは却って鼎の軽重を問われるだろにと思う。

【プレゼン資料読み上げ問題】
検察官請求の鑑定人が、不同意の鑑定書を引き写ししたプレゼン資料を読み上げようとしたので、異議を出し、伝聞法則の潜脱だと指摘したところ、「弁護人の主張は正当なところがある」として、同調された。この点は至極真っ当な訴訟指揮だった。
その結果、予定されたスライド1枚に20分を消費する有り様となり、細かな数字は全く説明できないなど、まともに訴訟が進行しなくなった。諸々考えて、やむなくプレゼン資料読み上げ方式に応じた(その途端、1スライド2分という10倍速で進んだ)が・・そういう準備で良いと思った検察官の見識を疑わざるを得ない。

【証言予定開示義務違反】
この事案は整理手続に付されているわけではないが、「AB」からなる甲号証を不同意とした証人に、検察官が「C」を尋問し始めたので異議を出した。
驚いたことに、裁判長は、証言予定(前記甲号証)は要旨に過ぎないので、証言予定に含まれない事項を尋問することも差し支えないという。
こんな訴訟指揮を許しては、反対尋問準備などしようがない。これには猛反発して食い下がり、「神経を疑う」「法律家としての見識を疑う」と指摘したところ、最終的には、検察官に対し「本題に入るよう(必要があったら後からCに入るように)」との有耶無耶な訴訟指揮がされたが・・証言予定開示と反対尋問準備に関し、この感覚は恐ろしい。反対尋問というものが全く分かっておられない、この感覚で裁判長をされては、憲法上の反対尋問権は絵に描いた餅である。

(弁護士 金岡)