本年10月16日、名古屋地裁刑事第5部合議係の裁判長は、被告人入廷前、
1.解錠時期について特段の配慮を行わないこと
2.弁護人に法廷内の視界を遮る措置を禁じること
の各命令を行った(本欄本年8月18日の事件が付合議になったものであり、何も言い出さないうちから2のような命令が飛んでくるのがdefaultになったわけではない(と思う))。

裁判長の説明では、被告人入廷前に円滑のための事務的な手続を行うことは期日内のものとして適法だということであり、この点は、被告人の重要な人権課題が取り扱われているというのに違和感の残るところであった。

また、裁判長は1項について、要旨「本件は晒すべきではない特段の事情がある場合に該当しない」という理由説明を付加した。
これに対し異議を申し立てて「どういう基準で晒すべきかどうか決まるのか、泥棒は晒されて良いと言うことなのか」と指摘したところ、裁判長は棄却決定に際し、「例えば少年事件は特段の事情があることが多い」と述べた。

また、2項について、異議を申し立て、「被告人が書記官席の前を移動するとき、どうしても下半身が遮られるのだから、弁護人が解錠時に数秒、下半身を遮ることがどうして問題になるのか」と指摘したが、こちらは黙殺された。
拘置所でばっちり身体検査を受けている被告人が、極端な話、「プールの着替えの時に小学生が使うような、首からすっぽりするアレ」を装着しても、法廷が危殆化するのだろうか。何とかも休み休み言え、というやつである(休み休み言われても困るが)。

その後、被告人が入廷し、裁判長から御言葉があった。
曰く、晒すことと、有罪無罪の判断とは、関係しないから、安心してほしいと。
殴りつけた、すぐ後に、「ちゃんと保護しますよ」と言われてもなぁ・・と思う。特段の事情がなければ晒し者にします、でも無罪推定は守ります、というのは、言行不一致も良いところだ。

(弁護士 金岡)