EDR即ち、イベント・データ・レコーダーである。
閾値を超えて記録されてさえいれば、強力な客観証拠とはなろう。
尤も、実証的な実験はまだまだのようであり、複雑な事案でどこまで通用するのかは未知数のところがあるように感じる。

と、最近、EDRについてまとめて学ぶ機会があり、関心を持って眺めている。
現状、自動車が絡んだらEDR記録を開示請求する、というところまで血肉になっていないので、これから意識的に励行する必要がありそうだ。

先日の愛知刑事弁護塾定例会で、アナリスト有資格者を講師にお招きして、一通りのお話しを頂いた。
また、民事事件であるが、双方がEDR記録に基づく意見書を証拠請求したという想定でアナリストの反対尋問を行う模擬裁判が企画され、傍聴させて頂いた。
後者は、また然るべき媒体で公表されるだろうから多くは語らないが、EDRを活用する事案でどのような証拠調べが行われることになるのかは見えてきたところがある。おそらく、EDRから車速や衝撃の度合いを数値で取り出すのはアナリストの仕事、その先の、当該数値の評価は、別の専門家に委ねられるべきことになるのだろう。ただ、複雑な事故だと、数値の取り出し方、一定の解釈幅がありそうで、そこはアナリスト同士が対立することも大いにありそうだ。

客観証拠は裁判の生命線である。
口さがない言い方をすれば、客観証拠だけが、妄想じみた「証拠印象主義」の裁判を完封できる可能性を秘める。
デジタル技術の進歩は凄まじく、あっという間に置いていかれるが、それでも機会を捉えて学び続けるしかない。

(弁護士 金岡)