腰縄手錠&SBM案件である。
先日(本年9月)、岐阜県弁護士会所属の弁護士から頂いた報告案件。
身体拘束中なので、弁護人から腰縄手錠&SBMの申し入れを行ったところ、両方ともあっさりと受け入れられ、弁護人が法廷に到着した時には既に解錠された被告人が弁護人席の隣に着席していたとのこと(岐阜地裁本庁、T裁判長)。
閉廷時も、先に傍聴人を退廷させてから、戒具の装着となった由。
これを聞いていた愛知県弁護士会所属の弁護士の直近の報告は真逆。
腰縄手錠もSBMもダメ。
検察側証人の尋問だったというのに(身体拘束事件のSBM実現例の一定数は尋問中の防御権配慮である)、被告人は前のベンチへどうぞという(名古屋地裁本庁、蛯原裁判長)。
同じ時期に、隣接した地域で、真逆の訴訟指揮が行われる。
これを「裁判官の独立」で片付けて良いものだろうか。
ことは人権侵害の問題であり、裁判官の胸先一つでどうとでもなった時代は既に終わりを告げている。名誉感情や、尋問権・弁護人選任権の実質的保障が、法廷毎に違うということは極力、無くす必要があるし、特に腰縄手錠&SBMは、ほぼ法廷の設営の問題であり裁判官の独立に委ねるような性質のものではない筈だ。
勿論今回は、T裁判長・蛯原裁判長の属人的な問題であって、文字通り岐阜地裁が名古屋地裁の先を行ったわけではないが、裁判所は往々にして、ヒラメが横に並んでいるようなものだと揶揄される組織であり、良い実例が横で行われていれば他の法廷にも良い影響が及ぶだろうし、その逆もまた然りである。その意味で、岐阜地裁は確実に名古屋地裁の先を行くだろう。
(弁護士 金岡)