自由と正義2026年4月号に、山口健一弁護士の「国選弁護制度の拡充の歴史と課題」という論文が掲載されていた。
その中で、日弁連が国選弁護事件の稼働時間や活動内容(労力)を統計的に把握するため実施している調査の中間集計が紹介されており(国選本部ニュース第40号所収とのことだが、そちらは何故か目に留まらず記憶にもない)、被疑者段階の平均時間単価9255円、被告人段階6643円と紹介されていた。

例えば地裁単独(非整理手続)の基礎報酬が7万7000円とされているから、至極単純な計算によれば(77000÷6643=)11.6時間の稼働時間を要した、ということになる。
身柄事件であるとして、往復時間や待ち時間込みで1回の接見に最低でも1.5時間は必要として、これを初回打合せ、開示記録に基づく打合せ、被告人質問前の打合せと3回で4.5時間(情状証人はないということにしておこう)。費用を節約して検察庁に記録閲覧して同じく1.5時間で都合6時間。法廷が判決まで期日2回で1時間。弁論の作成に2時間。ここまでで9時間。・・仮に検察官請求証拠以外の証拠開示の作業や、それに基づく打合せ、被害者との交渉、情状証人との打合せ、それらに必要な起案等々を計上すると、到底11.6時間では効くまい。

ということは、標準的な(自白・身柄の)被告人国選は、上記の、請求証拠以外の証拠開示を求めず、接見も3回程度で終わらせ、記録も検察庁に一度、読みに行く程度、に毛の生えた程度であり、これが標準であるからには、「それ以下」のものが半分やそこら、ある、ということになろうか。
これでは、被告人の言いたいことは十分にくみ上げられないだろうし、裁判所は裁判所で面白くもない有罪判決を量産するだけの不感症に陥るだろうし、刑事裁判が不活発にしかならないのも至極道理である。
法テラスの費用体系が、まともな弁護活動を想定しているとは思えない低次元の水準に止まっているのも問題であるが(私が法テラスと絶対に契約しないと決めているのも、費用体系の約款に同意することが刑事弁護人としての自己否定であると考えているからである)、こうして統計的な数字を眺めていると、弁護士層の不活発も深刻なのではなかろうかと想像された。

なお、1時間単価6643円は、(他の職種との比較がどうかと言うことは慮外であるが、)30分5500円(物価が大きく上がっていても永年、変わらない優等生価格である)を標準とする法律相談よりも低廉であり、法律相談を漁っていた方が経済的に潤うという馬鹿げたものである。
それでも国選弁護が弁護士の使命だと考え、邁進する諸先生方には、当然、敬意を表しなければならない。

(弁護士 金岡)