なかなか興味深い事態を教えて頂いたので取り上げたい。
件名の通り、検察官が弁護人に辞任するよう申し入れたというものである。

検察官の主張を要約すると次の通りである(名古屋地検公安部、鈴木舞検察官名義)。
「被疑者Aと被疑者Bは共犯関係にあり、被疑者Aが上位者である。
被疑者Aには甲弁護人、被疑者Bには乙弁護人が選任されているが、甲乙の両弁護士は同一の事務所に所属している。
共犯者間には「潜在的には常に利益相反のおそれがある」から同一弁護人が受任するのは不適切であり(職務基本規程28条)、接見等禁止事案の場合(本件はそうである)接見等禁止の潜脱になる懸念もある。
本件では同一の事務所所属であるから、職務基本規程57条により、職務基本規程28条が適用されることになる。
特に本件では、上位者である被疑者Aが供述し、被疑者Bは黙秘している。被疑者Aが自身に都合の良いことだけを供述し、被疑者Bには黙秘させ或いは被疑者Aの指示に基づく供述をさせているとみることが出来、正に利益相反である。職務基本規程28条但書により解消出来るものではない。」

上記の指摘のうち、共犯者間には「潜在的には常に利益相反のおそれがある」から同一弁護人が受任するのは不適切との論旨には賛同出来るものがあり(私は共犯関係にある被疑者被告人複数名から一括して受任したことはないし、今後も受任する予定は無い。なんなら両罰規定で法人も起訴されている場合の、代表者個人と法人とからの一括受任も拒否する。)、従って、本申入れについては、きちんとした考えを持って臨む必要があるだろう。

問題状況を分かりやすくするため、まず同一の事務所が複数被疑者から一括受任する場合を考えると、これは既に古典的に議論されている(例えば季刊刑事弁護22号所収の後藤貞人「共犯弁護と利害対立」などが挙げられ、近時では122号所収の座談会でも論じられている)とおり、一方に最善を尽くせば必然的に他方に最善を尽くせなくなることが通常であり、利害対立は不可避であって、最善を尽くして貰えない可能性を承知で一括受任を承諾する依頼者も現実にはいない筈だから依頼者の同意承諾も基本的に問題とならない、と整理して良いだろう。

そして、これが同一の事務所の同僚弁護士が分担で受任する場合、形式的には、甲はAに、乙はBに最善を尽くせば良いとは言え、職務基本規程57条の保護法益である、依頼者からの信頼感や公正性、特に信頼感を考えると、「上司Aの弁護人の同僚弁護人(同僚弁護士にも上下関係は有り得、乙が甲の後輩筋のことも考えられる)が果たして自分のために最善を尽くしてくれるだろうか」というBの不信感は完全には払拭しがたく、如何に公平性を担保する措置(チャイニーズウォールによる情報遮断措置等)を取ったところで、かかる分担受任もまた、職務基本規程違反との評価が基本的に妥当しよう。

尤も、基本線は上記の通りであるとは言え、しかし一括受任を支持すべき根拠も歴として語られている。次回はそちら側から検討したい。

(2/2・完に続く)

(弁護士 金岡)