精神科に通院している被疑者の取り調べに、せめて親族の同席を求めて交渉している案件がある。

過去に本欄で紹介しているかもしれないが、この1~2年の間に二度、親族を同席させての取調が実現した事例がある(弁護人同席は遠い)。1件はH警察署の事案で、被疑者に強い嗅覚過敏があり、自前の椅子を持ち込み配偶者を伴わないと殆ど話も出来ないような状態だった事案。もう1件は名古屋地検の事案で、被疑者に脳内出血の既往があり発語障害なども伴ったために配偶者が同席した事案である。

今般の交渉過程で、先方の取調官曰く「でも御家族の前だと却っていいにくいこと、知られたくないこともあるんじゃないですか」と。
なるほどそういう持って回った考え方なのか・・と思った。
当該家族の同席を求めているのは、当の被疑者本人なのだが。
そして、そういう配慮が出来るなら、取調官と一対一では十分に供述できない供述弱者に対する供述環境配慮の方に気を回すべきだろうと、つくづく思った。

所詮、強い立場にしか立ったことがないと、その目線でしか、ものが見られないのだろう。

(弁護士 金岡)