20日余り勾留されて、否認を貫き、釈放された場合に、収入の補償や弁護士費用相当の賠償を受けたいと思うことは当然である。
無罪判決に対しては刑事補償及び費用補償制度があるように、不起訴処分に対しては被疑者補償制度があることは、まあ知られているだろう(厳密に言えば、刑事補償制度に対応するものだけしかないが)。

では被疑者補償請求をやったことがあるか?と問われると、恥ずかしながら20年の弁護士人生(2012年10月登録だから丁度いま、20年である)で、一度も無い。
考えてみるまでもなく、これは良くないことだと自戒した。
少なくとも、依頼者に制度を説明し、やってみるかどうか、意思確認をすべきは絶対であり、これをしないでよい理由は考えつかない。
勿論、「その者が罪を犯さなかつたと認めるに足りる十分な事由があるとき」であるし、対審構造でもないから容易なことではない。二度、失望するだけかもしれない。
それでも、こちらが想像するよりも遙かに有利な証拠構造になっている、ということも有り得るだろう(自称被害者の主張が完全に破綻する客観証拠が見つかったような場合)。新たな事情を付加せずとも、立件だけさせて失うものは通常なく、身の証が立つ可能性もある。

刑事弁護を良くやる弁護士数名に尋ねたところ、誰一人として請求した経験が無く、勿論、認められた事例も手持ちにないという事態が判明した。
古い日弁連の意見書によれば、2005年は14件、2006年は17件,2007年年は18件の費用補償例がある、ということだから、(そもそも請求件数が極めて少ないだろうことはさておいて)無罪判決より狭き門である。

被疑者補償規程4条3号によれば、補償の申し出をすれば必要的に立件される。というより、補償の申し出がないと、「罪とならず」「嫌疑なし」及びこれに準じる場合しか立件されないから、被疑者補償制度を活かすには、3号の申し出から始める必要がある。
まずは弁護人が、依頼者に意向確認する習慣を身につけるところから始める必要があるということだろう。

丁度、不起訴になった否認事件が2件あったので、依頼者に意向を確認すると、何れもやりたいとのことであったので(やはり需要はある。これまで意向確認すらしていなかったことに、恥じ入るばかりである。)、早速に申し立てた。
・・・審査には2~3ヶ月、かかると言われてしまったので、年内には難しいかもしれないが、また経過を紹介したい。

(弁護士 金岡)