私はかねてより捜査弁護実践の一つとして、被収容者の生活実態に関心を持つべきことを提唱してきた。その生活実態に乖離した助言をしたところで無意味だし、せめて少しでも居心地を整え防御権行使しやすい環境にすることが重要である。
先日、本欄で取り上げた被収容経験者を講師とした勉強会も同趣旨である。

そして、近時、本欄で取り上げている「貸し机問題」を巡っては、愛知・岐阜・三重の代用監獄で何れも、貸し机が周知されることもなく死蔵されている実態が判明した(但し、例えば東海警察署にはないらしい、という話も聞こえる。死蔵され続けた末に代替わりして留置管理が知らないだけかもしれないが。)。いかに弁護士が被収容者の生活実態に無関心であったかを示すものであろう(そして20年近く、そのことに注意を払えなかった私も要反省である)。
なお、岐阜の貸し机は、最早「発泡スチロールの箱」で、ぐらつくそうである。それでも食事を載せる台があるだけ、尊厳に資するだろう。

さて話を戻すと、こういうことは、代用監獄見学を弁護士会が企画すれば良いのでは?と思い至った。拘置所や入管見学は幾らでも機会がある。刑務所見学も然り。
しかし代用監獄見学なんてしてないよな?と思ったのである。
代用監獄見学をしていれば、「こんなところで運動?」「こんな部屋に二人?」「あれ机は?」などといったことが、手に取るように分かったはずなのだ。

(弁護士 金岡)

【11月22日 追記】

やはり東海署は担当者が知らなかっただけで「あった」とのこと。それだけ持ち腐れている、ということでもあろうが。あと、気になる噂としては、「大阪府警にはない」というのもある。大阪の弁護士に試みて貰いたい。