2022年8月22日付けで件名の意見書が出されていたのを(今更に)読んだ。会から流れてくる各地の声明やら意見書を定期的に印刷して消化しているのだが、何かの拍子で埋もれていたのを発掘した次第。

旧聞に属することなので、現在の室蘭拘置支所の業務停止がどうなっているのかは知らなかったのだが(同会の2023年5月29日意見書によれば業務停止が強行されたとのこと)、ともかく2022年7月、室蘭拘置支所の業務を停止し、札幌地裁室蘭支部管内の被収容者を札幌拘置支所に移す、という方針が表明されたとのことである。

この手の地方の拘置支所の統廃合は、近時、あちらこちらで生じており、本欄2023年12月6日でも長﨑拘置支所の事例を取り上げたことがある。担当弁護士や家族等との外部交通が非常に不便になり、防御権その他の権利保障が著しく低下することについて、弁護士会が抗議し、協議を求めても、拘置所側は(昨今の政府方針と言おうか)説明する(という)ばかりで聞く耳は持たない、という展開が繰り返されている。

室蘭拘置支所問題も、この文脈で目新しいものではなく、更に北海道などに特有の問題として、本欄2021年12月15日で取り上げた旭川の実情と同様に、接見一つで一日が潰れる、どころか冬期となれば命の危険もあるということが公的に指摘されていながら、このような統廃合を強行しようというのは(したというのは)凄まじい話ではある。

今回、敢えて室蘭拘置支所問題を取り上げたのは、「出廷に際しての押送時間が長時間に及ぶことによる被告人の負担」という指摘になるほどと思わされたからである。
意見書によれば、札幌拘置支所から裁判所室蘭支部までは、高速道路で1時間50分を要するとのこと。朝10時から17時までの集中審理があるとして、朝7時から2時間かけて不自由な移動を強いられ、さあ集中審理といわれても無理な相談だろう。
以前に浜松支部で長期の裁判員裁判を担当した際、被告人の体調面になにかと気を遣わされたことはあるが(歯の状態を安定させるためのマウスピースをお湯でやわらかくするための熱湯を弁護人が用意したり)、押送に長距離移動という問題にはこれまで意識が向いていなかった。
朝10時からの集中審理に臨むのに早朝から2時間移動という選択肢は、我々にはないだろう。前泊して備えるところである。勿論、札幌拘置支所が裁判所室蘭支部付近に宿を取ることなどないだろうから、被告人の負担は否応なく被告人に押しつけられる筈。誰のための裁判かを考えれば、どう考えても説明の付かない事態である。
こういう反憲法的なことを平然とやる組織を信用しろなどというのは土台、無理な話である。

(弁護士 金岡)