最近の勾留・保釈についての報告の途中であるが、先にこちらの話題を取り上げておきたい。

勾留質問に立会を申し入れるべきである、という弁護人実践は夙に語られるが、現状の実務においては全く取り合われない、と言えるだろう。

しかし私の経験として、在宅被疑者の勾留質問であれば立ち会ったことが二度ある。
在宅被疑者の勾留質問は、例えば勾留却下により釈放された後、結局は起訴され、その際に検察官が「在宅求令状」をしてくる場合が典型だろう。
なにしろ在宅被疑者なので、一緒に裁判所に着いていき、「私がいて、なにか?」という顔をしていると、勾留質問に立ち会えるという寸法である。
前記経験では、応接室のようなところに通され、一通りこちらから準抗告が認容されて釈放された経緯を説明すると、「じゃ、帰って良いです」という感じで終わった。

このように、在宅被疑者が勾留質問に弁護人を同伴することは全き自由である。これが一転して身体拘束中だと同伴できなくなる理論的根拠はどこにもないだろう。現在、裁判所が判で押したように「認めません」というのは、いやそもそも、裁判所に「認めない権利」などないと思われる(要求されるのは、排除できる法的根拠であり、立会権があるかないかではなく、議論のすり替えが行われている)ので、明らかに違法が横行していると考える。

さて、今回の報告は、「A罪で勾留されていた被疑者が、公訴事実の同一性を欠くB罪で起訴された」という場合である。
このような場合、A罪の勾留ではB罪の起訴後勾留が出来ないので、裁判所はB罪について勾留質問を行い、起訴後勾留するかを決定することになる。
理論的にみた場合、A罪の勾留最終日にB罪で起訴された被告人は、(A罪の勾留が24時まで可能なのか、不起訴処分とともに失効するのかは本題ではないのでさておくとして、)A罪では勾留中だが、B罪では在宅被告人である。
従って、たまたまA罪で代用監獄にお住まいであり、代用監獄職員による送迎を受ける待遇ではあるが、B罪との関係では、なにかしら強制的、一方的取り扱いを受ける立場ではないと言うことになる。
そこに着目すると、たとえ身体拘束中の被疑者が勾留質問に弁護人を同伴することを違法な公権力行使により強制的に排除して知らん顔の現在の裁判所実務を前提にしても、B罪の在宅被告人が弁護人を同伴することを強制的に排除することは出来ないはずである。
今回、そこに着目して立会を請求したが、裁判所は(身体拘束中の被疑者におなじみの)認めませんという対応に終始した。
前記の通り、B罪の在宅被告人である依頼者は、しかし、通常の身体拘束中の被疑者と同じように、裁判所構内の地下にある、辿り着くまでに二重に施錠された勾留質問室に連行され(B罪の在宅被告人である依頼者を手錠腰縄で連行することは違法だと思う)、弁護人が居座ろうにも通行できないので不可能である。
かくして、しれっと同席することも叶わないのであるが、こういう、理論的な説明も出来ないのに腕力で排除する、という事態は実に腹立たしい。腕力で排除されれば事前救済措置はないので、結局、国賠しかないのか?ということになる。それはそれで一興であるが。

(弁護士 金岡)