本日付け名古屋地裁(刑事5部:奥山豪、髙橋里奈、金納達昭)の保釈却下決定に対する準抗告申立棄却決定の判断理由。

「本件は、覚せい剤の使用についての被告人の認識の有無が争点となると見込まれるところ、本件の事案の性質、本件の証拠構造及び証拠関係等に照らせば、被告人を釈放した場合、自己に有利な証拠を作出するなどして罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると認められ、刑事訴訟法89条4号に該当する事由がある。
そして、上記の事情からすると、被告人の妻等が身元引受書を提出していることなど弁護人が指摘する諸事情を考慮しても、現時点において、現時点において、裁量により保釈を許可するのが相当とも認められない。」

これが全文そのままである。結論しか述べていない。(負け犬の遠吠えと言われようとなんだろうと)具体的に論じると言い負ける、という場合の裁判所の常套手段である(と評さざるを得ない)。弁護士は、裁判所を説得しようと証拠を作り、理論を磨いて、書面を作るのだが、結論だけ書けば理由を示さなくても裁判を済ませたことに出来る裁判所は、なんと気楽な商売だろうか。

因みに、行政法分野における、不利益処分における処分理由明示の法理に関し、最高裁判所は、その根拠を「処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たもの」とし、例えば「・・・いかなる理由に基づ いてどのような処分基準の適用によって免許取消処分が選択されたのかを知ること はできないものといわざるを得ない。このような本件の事情の下においては,行政 手続法14条1項本文の趣旨に照らし,同項本文の要求する理由提示としては十分 でないといわなければならず,本件免許取消処分は,同項本文の定める理由提示の 要件を欠いた違法な処分である」(最三小判決平成23年6月7日)と断じたりしている。今回の決定は(本当によく見るprototypeなのだが)、自らに甘い裁判所の体質を余すところなく示している、というと言い過ぎだろうか。

(弁護士 金岡)