「は」の意味はさておいて。在留特別許可を求める事案が割と好調である。今年に入って3件の在留特別許可が出ている。うち2件は敗訴確定事案、うち1件は異議段階で認められた事案である。

【1】 偽装結婚により入国(有罪判決)、その後、日本人内縁夫と同居、二子をもうけた。二子出生を入管に報告して間もなくの在特判断となった。訴訟では内縁関係の要保護性から争われていたので、時間の経過により実証できた、と評価して良いのではないか。とともに、偽装結婚による有罪判決は確かに重大な消極要素ではあろうが、最終的には総合評価の中に取り込まれようものである。

【2】 研修生被害あり、不法残留以外の消極要素は(こちらの立場では)ない案件。日本人配偶者との年齢差があったことで、訴訟序盤では恰も不法就労助長の温床であるかに主張されたが、慎重な立証によりこれを覆したことが最終的な在特に繋がったと評価できるのではないか(一子出生後しばらくで在特)。入管の現地調査が、その見立て・思い込みを裏付んがために実施される場合、その結果には露骨なまでの偏りがある。そういった失態は大いに利用価値がある。

【3】 不法就労助長の罰金判決を受けた永住者の事案。内縁夫の依頼で異議段階から受任し、仮放免+入籍を待つよう主張したところ、これが容れられ、速やかに仮放免、入籍となった。約4ヶ月後に在特。近時、正規滞在者に退去強制事由が発生する事案が目につく。もともと非正規の事案と異なり、本邦に定着していた事実があるだけに、一回的な非違行為で国外追放という座りの悪さには慎重であるべきである。

刑事事件において、身体拘束からの解放を求める裁判は1~2日で判断されるが、入管の仮放免は3週間以上は審査に時間を要する。この違いは理解しかねるところであり、受任から2~3週間で仮放免が得られても、(業界的にはとても早いと言われるのだが)複雑な心境である。

【8月21日 追記】 日本人夫ともども不法就労助長の罰金判決を受けた永住者の事案(但し、おそらく弁護士が介入するまでもないと判断し、弁護士費用をかけず対応したらどうかと勧めて継続相談扱い)について、本人より、異議段階で在留特別許可が出たとの報告を受けた。日本人であれば逮捕勾留すらされないかもしれない程度の罰金事案で退去強制の危うきにさらされるという極端ぶりを見るにつけても、入管手続が偏っている~警察官・検察官・裁判官を全て入管が司る~ことを思わされるところである。

(弁護士 金岡)