今回は、件名の書籍を紹介する。

例年、年末は何かと、ややこしい刑事事件に巻き込まれる。
昨年は「保釈10日放置騒動」の打開のため毎日ファクス送信機まで日参を続け、一昨年は片道90分はかかる代用監獄に通いつつ勾留延長の攻防をやっていた。
それに引き換え本年は、そういうこともなく、少しは積ん読の解消を図れると期待していたところに(但し急ぎの控訴審の相談が舞い込んだので三が日の出勤は確定した)、件名の書籍が届いたので、読んでみたというわけである。

この書籍は、執筆者の御厚意で頂いた。有斐閣から出されており、帯には後藤貞人弁護士の「圧倒的な熱量である」の文字が躍る。
表題からすると単なるノウハウ本のようにも思えたが、ノウハウ本でも自分の領域の本は、なるたけ目を通したい(1%でも2%でも得るものがあれば得たい)。それに、ノウハウ本なら2~30分もあれば斜め読み出来るだろう。

さて、本書は趣向としては、刑事弁護の最初から最後までを実践的に説明するもので、その性質上、網羅的ではあるが、やはり掘り下げた研究書ではない。これから高い水準での刑事弁護を目指す人や、勉強に手が回らず、研修からも足が遠のき、我流に陥り最新の実践から遠ざかってしまっている中堅以上向けの書籍と言えるだろう。
「流派」的な違いは、ままあるので、突っ込み出すと切りがないが、大筋において高い水準の実践が平易に説明されていることは間違いなく、ビギナーズ2.1が既に5年以上も前の書籍であることを思えば、「取りあえずこの1冊から始める」と言えるだけの資格はあるだろう。前掲帯に「気鋭の刑事弁護士があなたに伴走する」とあるのは嘘偽りではなかった。

類書に見られづらい特徴の一つは、被害者参加人の訴訟活動に対する異議に言及がされていたり、腰縄手錠問題についても実践が説かれているあたりだろうか(後者には脚注文献として当事務所ブログ記事が紹介されている)。本書に通底する、弁護人の主体性、能動性が重視される現代的な記述は、黙っていれば事態がどんどん悪化するだけであり、改善させたければ適時に口を開くしかないという問題意識の表れであろうが、これくらい隅々まで行き届いているのは、偉い。

もう一つ、本書の売りだろう点は、「2025年刑訴法改正(IT関係)」を詳しめに取り上げていることだろう。現時点で同改正に関するまとまった実務書は他にはないのではないかと思う。
未だ実務の動向が定まっていない以上、本書が間違いなく正しいかの保証はない。例えば本書27頁で「今後は、接見室にIT機器を持ち込み、オンラインで証拠を見ながら依頼人と接見することが当然に想定される」とあるのは、おそらく刑事施設側の対応を踏まえたものではなかろう、といった懸念点はあり、読み方に注意は必要になるが、それを割り引いても拾い読む価値はある。

このように、部分的には目新しい記述もあるし、現代的な刑事弁護をとりまとめたものでもあるので、何かの合間に拾い読むくらいでも得るものがある書籍として、お薦めできる。

(弁護士 金岡)