引き続き、最高裁判所が弁護士や検察官を招いて行ったとする保釈の研究会資料(令和7年度刑事専門研究会3)の感想である。
今回は、前々回(本欄本年5月1日)、槍玉に挙げた古賀報告を中心的に取り上げる(前々回、批判した国民感情に照らした保釈の許容性という意味不明な議論は省く)。

【古賀報告】

1.大川原化工機事件について
「大川原化工機事件における担当検察官の対応は、保釈請求への検察官の一般的な対応と位置付けられるものではない」とのこと。

求釈明対応一つとっても「決裁が必要」として期日を空転させる検察庁が、大川原化工機事件については担当検察官任せにしていたということだろうか・・もとより真に受けるべきではない。腐敗した組織に頻出の「尻尾切り」であろう。
そして「尻尾切り」して組織的問題から目を背けているようでは、反省はないと言うことである。

2.手続の進行状況と4号除外事由
「被告人が冒頭手続で公訴事実を認め、検察官請求証拠の全てに同意し、その取調を終えるに至ったときは、罪証隠滅のおそれが減少したとみられる場合が多い」

未だにこういうことを恥ずかしげもなく言う。逆に凄いと思う。全面降伏しない限り4号事由が減少しませんよ、というのは、今時、裁判所でも通用しまい。

3.弁護人の予定主張や証拠意見の予定との関係
弁護人から公訴事実を認める、証拠を全部同意すると言った方針が示されても「保釈後にその方針が維持されず、事実関係が争われたり、証拠について不同意意見が述べられたりする事案も少なくありません」

本当に少なくないのだろうか?まずは根拠を示して貰いたいものだ。
そうでなければ、単なるagitationであろう。

4.刑事施設への医療情報照会
「拘置所等の照会対応の体制上の事情から相応の日数を要する・・緊急性が高くない疾病についても健康上の不利益として主張されることが増加傾向にあり、拘置所等に対する照会件数が急増していることから、従前よりも回答を得るまでに多くの日数を要する状況となっています」

なんだか緊急性が高くない疾病は保釈の必要性を基礎付ける健康上の不利益ではない、という言い草であるが、それはまあ、さておく。

問題は、健康問題が争点化する場合、保釈の審理に「相応の日数」「(より)多くの日数」が必要だと主張している点だが、まあ、嘘だと断じて良いだろう。
過去に本欄で報告しているような、弁護側が協力医を立てて健康問題を争点化しているような事案でも、例えば保釈が許可された後、検察官が即日、抗告に及んだ時点で、原決定を批判するための拘置所からの電話聴取書が付されていることは経験している。
つまり少なくとも、保釈を妨害するためには、即日、情報を持ってくることが出来ると言うことである。仮に検察庁が保釈の審理において医療情報照会に時間が掛かると主張するとすれば、それは単に「必死で急ごうとはしていない」(保釈が許可されてしまう可能性があるのに、わざわざ急ぐ義理はないという、明らかに誤った考え方に基づく)からに過ぎないと考えておけば良い。

5.パスポート
「保釈条件を守らせる立場にあるはずの弁護人が、被告人にパスポートを返却するなどし、結果としてその逃亡を助けてしまうというようなことも起きています」

保釈条件に、弁護人預かりが入っていたのかどうか、そこが明確にされるべきである。もしそうだというのにパスポートが返却されたのだとすれば、弁護人が悪いが、そこを曖昧にして尤もらしく言うのも、agitation的である。

6.裁量保釈の相当性
「釈放を相当とする特別の事情の有無を判断しています」

未だにこれだからどうしようもない。
河津報告、友近報告と比べて、数世代も古い化石のような報告である。

【総括】
検察官報告だけは異次元であった。
弁護士の報告、裁判官の報告は、割と近づいている感がある。

もっとも、裁判官報告には、「まだそこ?」「今更それをいう?」と感じざるを得ない点もあり、そのような今更の内容をわざわざ強調するからには、おそらく、全体の水準は友近報告に遠く及ばないと警戒しておく必要がある。我々弁護人としても、今や友近報告が最低線を画することを裁判所に伝える努力は怠らない方が良い、と思われた。

(弁護士 金岡)