共同通信等の報道によれば、本年9月26日の衆議院における主張の所信表明演説において、「首相は『今この瞬間も、海上保安庁、警察、自衛隊の諸君が、任務に当たっています』と訴えた上で『今この場所から、心からの敬意を表そうではありませんか』と呼び掛け、拍手した。自民党議員が立ち上がり首相に倣った」という出来事が起きたそうだ。

首相が個人の所信を表明する分には(嫌悪感を催すものであるとしても)基本的に自由裁量だろうが、問題とすべきは追随した議員の行動であろう。
立法府は、少数意見にも配慮しつつ、議論を尽くし、意見形成をすべき三権の一つであり、首相の翼賛機関ではない。
そして、国防が国家の重大事であるというなら、それと同等の国家の重大事を担う層は多岐に亘り考えられる。24時間、身を粉にして人権に奉仕する、ということであれば、物流を担う長距離運転手然り、福祉現場の介護職然り、手弁当で死刑再審に取り組む弁護士然り、そこに優劣など付けられまい。敢えて国防だけを取り上げ、拍手を求めることに透けて見える、軍事による国威発揚に考えもなく追随する自民党議員の見識のなさには、改めて呆れる。立法権の担い手であるという自覚は見えず、首相の翼賛機関に甘んじるというなら、何故、税金を払って雇ってやらねばならないのか。

本欄では何度か、自民党のひどさを取り上げているが、底の見えない深刻さである。

(弁護士 金岡)