刑事弁護専門を標榜する某事務所に依頼したところ、預かり金を含め200万円を請求された、という依頼者の相談を受けたことがある。
その事案は、結局、逮捕後に私が受任し、着手金20万、関連事件の再逮捕+10万、罪体には争いがなく、保釈を取り、執行猶予判決を得て報酬30万、とこういう感じで処理した。保釈について、別途着手金を要求したり報酬を徴収したりはしていない。本音で言えば、再逮捕後の身柄裁判や接見回数の嵩み方を考えると、再逮捕+20万、が適正価格かとは思うが、どこをどうしても200万円という数字にはならない。

その依頼者が持参した某事務所との契約書を見ると、基本着手金として、特に簡単で40万、普通で60万、複雑で80万、等とある。身柄事件は+20万、被害者がいる場合も+20万だという。
おそらく、上記事案は普通=60万と分類され、身柄拘束と被害者がおまけに付くので着手金は100万円となろう。
ついでに、保釈報酬が保釈金の20%とあるので40万、執行猶予報酬が30万円となり、合計170万円。接見や公判出頭は(時間にもよるが)単価4万円が加算されるそうなので、なるほど接見を数回に抑えたとして200万円を預かる計算は「合理的」である。

私であれば、という前提で言うなら、保釈までの接見回数は少なくとも15回くらいにはなるだろう。平均60分と仮定しても(軌道に乗れば接見時間は減少する)15時間。起案や記録検討に20時間として、合計35時間。総額70万なら時間単価2万円、総額200万円なら時間単価は6万6000円。どこら辺が刑事弁護人の「相場」であるべきだろうか。
一概に決められる問題ではないが、200万円貰わなければ上記事案に対処する自信が無いというなら、刑事弁護専門を標榜するのは止めて貰いたいものだ。

因みに、くだんの「刑事弁護リーダーズ」(本欄本年8月23日分参照)は、接見回数と弁護士費用を連動させることや、保釈着手金を、何れも否定している。まっとうな姿勢である。

(弁護士 金岡)