孫引きになるが、某雑誌の指摘によると、2013年から2015年にかけての高裁逆転無罪は、総数43件であり、うち名古屋高裁は0件、ということである。実に実感にあう数字と言わなければならない。

昨年末来、高裁案件が急増した。昨年12月、12月、今年に入って6月、8月、9月、9月、10月。共同受任要請3件、一審弁護人要請2件、飛び込み1件、続投1件。そして、傍目八目も入ってはいるだろうが、事実の掘り起こしも証拠開示も不徹底との印象を受けるものばかりである。控訴審弁護は事後審的に一審を見直せば済むというものではなく、一から打合せを重ねて一審弁護人の水準に辿り着き、更に独自調査を重ねて誤判原因に対峙し、かつ、出来の宜しくない尋問結果等をなんとか批判しなければならないという、非常な労苦を伴うのであるが、そうやって独自調査を重ねても片っ端から証拠は却下され、何もさせて貰えず、というのが率直なところ(その反面で、検察控訴事案は、頼まれもしない証拠調べまで敢行されるのだから、嗤うしかない)であり、上記の数字も宜なるかなである。統計や裁判官運にぼやいていても始まらないのは百も承知だが、確率「0」なら、最早どうしろと・・と、思いたくなる。

つい先日の高裁刑事1部(山口裕之裁判長)も、なかなかにひどい法廷であり、傍聴した被告人の父親もいたく憤られていた。内容面は置いて、手続面だけ見ても、
1.検察官が不同意と述べた証拠は撤回の有無も伝聞例外の有無も聞かず「却下」(普通は、撤回しますか、維持しますか、と確認するものだ)、
2.検察官が同意した以外の証拠はすべて却下(検察官が同意したって不必要なら却下したら良いと思うのだが、なにも考えていらっしゃらないのだろう、と見受ける)、
3.同意があり採用した証拠の取調べを忘れて結審しようとする(つまり、同意意見だから採用はしたものの内心ではどうでも良いと思っている証拠)、
という体たらく。
粗悪な訴訟指揮だが、これが「稀に見る」とも言えないところが、いまを象徴している。

(弁護士 金岡)