以前(本欄2016年9月20日付け)、身体拘束下の被告人でも弁護人の隣に着席して裁判を進めた控訴審案件を紹介した。
当事者を当事者席に座らせるという、言われてみれば当たり前のこのことは、だいぶ当たり前の光景にはなりつつあるも、まだまだ身体拘束下にない被告人の案件でさえ世の趨勢となるところには程遠い。裁判所も、事前に何も言わなくても「ああそっちに座るんだ」程度に受け止め咎め立てしないようにはなっている(「えっ」と困った感じになる書記官は時々いる)が、積極的に改革に乗り出そうとはしない。

先日、たまたま傍聴した法廷は、身体拘束下にない被告人に対する判決公判であったが、やはり被告人は隣ではなかった。弁護人は、見た感じで数年程度の若手と見受けたが、依頼者をつくねんと前の席に座らせておいて何故平気なのだろうか。
思うに、身体拘束下の裁判員裁判でもできることなのだから、全事件でできるということに他ならない。物わかりの良すぎる(物を知らなさすぎる)弁護人が多いのは仕方が無いとして、裁判所が、(お白州席は論外として)弁護人席の前の長椅子も取っ払い、弁護人の隣以外に座る場所を無くしてしまえば良いのではないかと思う。
被告人席と弁護人席を二列にしつらえることに、なにか深い考えがあったとは思われない。せいぜい、真四角に近く手狭な法廷を効率よく利用する程度のことではないか。裁判員の目を気にするなら、傍聴席の目も気にし、この際、長いすを取っ払うことを全国的に提案してみたらどうか、と思ったものである。

(弁護士 金岡)