先だって受任していた捜査弁護が無事、嫌疑不十分で終了した。
不起訴処分の告知を要求すると、不起訴理由が書かれる時と書かれない時がある、というのは以前にも本欄で取り上げたと記憶するが、(官庁の絡む経済事犯ではあったが)世間的に大したこともなかったのだろう、今回は嫌疑不十分と明記されていた。
それにしても、少し失敗談になるが、立件段階で受任して被疑者側関係者をまとめ上げ、割と積極的に資料を提出して冤罪を指摘し、捜査機関で十分に検討できたと思うあたりでとどめに不起訴意見書を提出したところ・・・なんと3週間も前に不起訴になっていたことを知らされたのだった。
弁護の方向性は間違っていなかったとは言え、時機の読み間違い。これは少々、恥ずかしい。
しかし思うのは、やはり制度がおかしいのではないかと言うこと。
出頭要請がかけられたり、関係先に捜索差押えが入ったりして、被疑者からすれば随分な仕打ちを受けるわけである。それが、知らぬ間に不起訴処分となり、その連絡もなく放置される。嫌疑不十分と書かれた紙切れ一枚でも、関係先との信頼関係の回復には効果的なのだ。不十分な嫌疑をかけ、国家権力を行使して生活をかき乱した責任を自覚するなら、言わずとも不起訴理由付きで不起訴処分を届けてきてなんぼではなかろうか。
(特に在宅事件では)請求しない限り不起訴となったことすら知る縁もないという制度に合理性は見いだせない。
(弁護士 金岡)