本日付け岐阜地裁の保釈却下決定に対する準抗告認容決定は、味わい深い、良い内容だった。
事案は、面識ある未成年者への性犯罪であり、公訴事実を否認している。

この種の事案では、「否認しているから被害者に働き掛ける現実的可能性が高度」「面識があるから働き掛け可能」「未成年であり屈しやすい」あたりのtemplateな事情から保釈却下をされることも、まだ、ままある。まま、どころか、もっとだろう。

しかし、考えてみれば、相当額の保釈金を納付してもなお、そこまでやるような事案がどれだけあるのだろうか。また、(自称)性被害者ともなれば、捜査機関は言うに及ばず、親や生活環境回りで幾重にも保護され、働き掛けはたちどころに露見しよう。そこまでの危険を冒して、やっと得た自由(保釈)をフイにするようなことが現実的なのだろうか。最高裁判所が、罪証隠滅等の現実的危険性の程度を問題にして以降、この問題意識はより一層、真剣に取り合われるべきであろう。

本件で、上記の理(被害者が幾重にも保護されていること)を指摘したところ、準抗告審(山崎秀尚裁判長)は「被害者の親族らが本件を認知していること」という表現で応えた(と、評価している)。これはなかなか、気の利いた言い回しだと思う(余り見たことがない)。結論として、相当額の保釈金等の保釈条件の下であれば、罪証隠滅の現実的危険性は高いとまでいえないと評価された(かつて著名な元高裁判事が、「どれほどの保釈条件を付しても阻止し得ないのかどうか」を問題とすべきだと論じておられたが、至当である)。

更に本件では、(色々あったが)第1回公判の数日前まで検察官請求証拠が開示されず、そのため弁護人の任意開示請求が先行し、更に第1回公判で検察官が「本件では任意開示に応じない」と主張するなど(流石に裁判所が再考を促した)、まったく被告人に関わらないところで訴訟遅延が生じていた。

被告人に関わらない訴訟遅延があるのに保釈が許可されない場合、被告人は、「反対尋問準備のため、ひたすらいつになるかも分からない証拠開示を待ち続ける」か、「いつになるかも分からない証拠開示をあきらめ、無理矢理に裁判を進める」か、二者択一を迫られる。(迅速な裁判であっても、身体拘束の苦痛は明らかなのである。まして、訴訟遅延の産物ともなれば、)これほど不合理な話もあるまい。

この指摘についても、裁判所は、「起訴後約2か月が経過した現時点において、いまだ証拠調べ手続が開始されておらず、今後裁判が終結するまで相当の期間を要すると認められること」という表現で応えた(と、評価している)。起訴後暫く証拠調べ手続には入れない理由は色々あるだろうから、こと本訴における訴訟遅延を、裁判所は許しがたかったのだろうと思う。

正に問題視しているところに誤魔化さず向き合ってもらえると、弁護人冥利に尽きる。

(弁護士 金岡)