平成29年4月26日付け本欄で、再審の打合せのための面会を妨害され続けたことについて、行政事件訴訟法上の仮の救済措置が活用され、認容された事例を報告した。

その後、本案はどうなったのかと気にかけていたところ、この9月19日、判決情報の報道に接した。
報道によれば、1妨害あたり2万円の国家賠償請求が認容されたと言うことである(差止め本体は、仮の差止め事件が最高裁で確定した後、面会妨害が止んだと言うことだから、訴えの利益が失われたのだろう)。

2つ「ひどい」と言うべきである。

1つは、東京拘置所の対応である。なんと裁判所の仮の差し止めが出されてからも、これを無視して面会妨害(立会)を続けること6度というのである。法律は無視する、司法判断も無視する。横暴も極まれりである。なお、報道によれば、国側は裁判で「拘置所長は、(一時差し止めの)決定の効力が生じているとは認識していなかった。」と反論し、裁判所も(過失は認めたものの)故意は無かったと判断したようであるが・・どちらも論外であり、馬鹿にするなと言いたくなる水準だ。

もう1つは裁判所の損害評価である。司法判断を無視して面会妨害を続けても、たったの2万円。それだけでも驚きだが、この再審がいわゆる「死刑再審」であったことを踏まえると、尚更に驚きである。「一人の生命は、全地球よりも重い」とは最高裁の台詞であるが、全地球より重い命を奪うことの当否を問う再審について、面会妨害がされ続けた事態を踏まえて、それでも2万円が適正なのだろうか。もともと自分の財布が傷むわけではない拘置所職員に対し、損害額の多寡による抑止効果はさほどないのかもしれないが、それでも、ぎょっとするくらい高額にして、将来の違法を抑制しないと、同じことが延々と繰り返されるに違いない。

国賠の結末としては、至って残念と言う他ない、お粗末な判決であった。

(弁護士 金岡)