係属中の事件なので具体的な情報は伏せた上で報告する。

午前中に弁護側の反対尋問が終わり、ちょっとした遣り取りの末、検察官の再主尋問は午後に実施されることになった。
弁護人として、検察官が証人(警察官である)と打合せをすることは不公平であると考え、即時に実施しないなら検察官と証人との接触を禁止するよう裁判長に要望し、裁判長も「禁止する」とした。

ところが。
午後に開廷されると(検察官の要望により更に20分、開廷時間が遅れた)、裁判長は検察官の要望により開廷時間が遅れたことを説明の上で、「検察官から再主尋問準備のために証人と打ち合わせたいとの要望があったので、これを許可しました」と述べたのだ。

公判廷で弁護人と被告人とに約束した、検察官と証人との接触の禁止を、弁護人や被告人の不在の場で、その意見を聞くこともなく、解除してしまう。これほど背信的な訴訟指揮があるだろうか。
当然、強く抗議したが、今後は気をつけます的にいなされただけに終わった。
裁判員裁判であったが、はたして裁判員の目にはどのように映ったのだろうか。いや、それより被告人から見て、この裁判長は自身の運命を預けるに足りると思えただろうか。

刑事弁護を16年以上やってきたが、ものの1時間で密室の取引をやらかし前言を翻した裁判長というのは、流石に記憶にない。ここまで、それなりに慎重に、公平な訴訟指揮を心がけてこられたと評価していただけに、非常に落胆した。

なお、結局、検察官は、それでも再主尋問が準備できないとして、再主尋問は相当後に回されてしまった。これまた前代未聞の珍事である。

【5月28日 追記】 裁判長に対し「謝罪と、今後は絶対に一方的に反古にしないことの約束」を求めたところ、公判冒頭でそのように応じられた。「前回述べたとおり」とか「重ねて申し上げることはない」等と有耶無耶にされるのかと思いきや、潔い態度であった。

(弁護士 金岡)