この秋も数件、単位会の研修の依頼を受けている。
整理手続、要通訳等とお馴染みの中に、最北端は旭川から、否認事件の総論的な研修を依頼されたのが珍しい。
実は、否認事件の総論的な研修は、以前からやってみたいと思っていたところだった。捜査/整理手続/反対尋問と、各論を相当に突っ込んで議論することはお手の物だが、他の弁護士の失敗事例を見るに、問題はそれ以前のところにもある、と感じられていたからだ。
例えば証拠意見の出し方一つをとっても、「絶対に同意できないところだけを厳選して一生懸命に不同意箇所を特定する」ような馬鹿馬鹿しい証拠意見を、しょっちゅう、目にする。そういう弁護人に限って、「その他の漫然と同意した部分」について、任意開示で裏付け一つとるでもなく、要は「依頼者が争うと言わないので同意しました」というのが見え透いている。
挙げ句、判決で同意部分が思いがけず不利益に作用したりする。情状関係で争いがあるような事案でも、「厳密に立証を求めれば検察は困っただろうに」というような事実関係があっさり法廷に出てきたりするから困りものだ。つまるところ、根本的に考え方の方向性が間違っている。
ということで、旭川の研修には結構な時間を割いて準備をした。
思わぬ陥穽に嵌まらぬよう立ち回るには勿論、一回や二回の研修だけでどうにでもなるものではないが、「これまで考え違いしていたな」と一箇所でも二箇所でも気付いて貰えるものになればよいと思う。
(弁護士 金岡)