高刑2部繋がりで、上告に伴う保釈却下に対する異議が認容されたものがあるので、こちらも取り上げておこうと思う。もっとも、さして良い意味で取り上げるわけではない。

事案は、
・第1審冒頭で認めて保釈許可
・検察側証人の尋問を契機に否認に転じるも、実刑判決
・控訴後、直ちに保釈許可
・控訴審では量刑不当により減刑するも実刑維持
・上告審に向けた保釈申立(但し上告手続は後回し)をするも保釈却下
という流れを辿り、異議を申し立てたものである(異議審=名古屋高裁刑事2部)。

弁護人の感覚からすれば、第1審実刑判決後も保釈許可が出ており、保釈条件も遵守してきているのだから、控訴審実刑判決後に再度保釈を許可しても実害はないだろうし、否認事件であるからには「収容されるか諦めるかの二者択一を迫る」ような保釈却下は論外だと思う。
しばしば「保釈する特別な事情がない」「必要が無い」という言われ方をするが、憲法は人身の自由を基礎においているのだから、「特別な事情」等は不要なはずで、法文上も「適当」かどうかである。そして、実刑判決後も問題なく保釈生活を送れていること、否認事件について上告審の判断を受ける、裁判を受ける権利を保障すべきことも考えると、現状維持が「適当」でない理由を見つける方が難しいのだが・・。

近時、立て続けにこのような控訴審実刑判決後の保釈を蹴られる経験をした。
異議を申し立てても内容がない棄却決定しか届かないので暖簾に腕押しである。
今回の異議申立に対する認容決定も、「所論は・・・というのである。そして、原決定は、そうした事情を踏まえた上、被告人の保釈を許可するに足りる必要性があるとは言えないと判断したものと解され、そのような判断が公判を担当した裁判所の保有する裁量の範囲を逸脱したものとは言えない」と断じているから、やはり「暖簾」である。

この「暖簾」決定が、しかし結論として異議申立を認容したのは、不幸なことに収容を前にした被告人が交通事故に遭ったからである。
曰く「全治まで2週間前後を要する診断を受けて、今後、少なくとも相当期間にわたる通院加療が必要な状況」が生じ、これに「所論」を加えると、現時点における保釈の必要の高さに照らすと裁量により保釈を許可する必要性があるという説明である。
怪我人を無理矢理収容するわけにもいかないね、という理解を示して頂いたことはなによりである。常識的な判断であり、率直に評価できる。

なのだが、しかしやはり本来は、その手前の「所論」段階で決着をつけるべきだったのではないかという思いがぬぐえない。
実刑判決×2>適切な保釈生活+裁判を受ける権利
実刑判決×2<適切な保釈生活+裁判を受ける権利+相当期間の通院
そんなものなのだろうか?裁判官に見えている世界はどのようなものなのだろう。少なくとも理論的に説明出来る代物ではないように思う。

(弁護士 金岡)