ここ2~3年、不思議と裁判所相手の国賠を提起することが相次いだ。警察であれ刑事施設であれ裁判所であれ、職務を妨害されては黙っているわけにいかない点で何ら異なるところはなく、事後救済であれ、問うべきことは問う必要がある。

本欄でも紹介していた、
・ 罪名落ちしたのに当初被疑罪名のみの勾留理由開示がされた事案
・ 傍聴席でのノートパソコンの事案
の他にも、
・ 要急事件の控訴審で私選弁護人の出頭を妨げるため、国選を留任させた上で期日変更も認めず、忌避却下決定も未送達のまま即日判決を言い渡した事案
・ 滞納された弁護士費用の支払い方を協議するため、元依頼者である未決拘禁者に対する接見禁止解除を申し立てたところ拒否された事案
があるが、先日、勾留理由開示案件で(4度目の)理由無き上告棄却を受け(憲法判断は示されなかった)、見事に全滅した。

刑事施設相手の国賠なら(金額の多寡はあれど)相当割合で違法過失が認定される自身の実績を思うと、被害者から見て同じ類の職務妨害に対し裁判所には全滅の憂き目に遭うことは、やはり、加害者の守られ方が半端ではないことに原因があると考えざるを得ない。
判例法理とされる「当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情」を要求されては、かなりおかしな裁判官でも「そういう目的ではない」と言い抜けられる上に、事実がどうあれ立証は至難を極める。
事実、どの事件であっても被告は基本、当該職務行為が何らかの法規範に反しているかという観点では殆ど応戦せず、「当該裁判官の違法又は不当な目的」を否定することに終始し、法規範違反について主張を戦わせようにも、裁判所も又、そこに逃げ込む。
ついでに、多くの国賠事件が合議になるのに対し、裁判官相手の国賠は単独事件のままそそくさと進められ、上記「目的」立証のために張本人の裁判官の人証申請をしても却下される。

裁判官の独立や、萎縮しない訴訟指揮を守ることが裁判の適正に資するという美名を振りかざせば聞こえは良いが、被害者側からすれば、くさいものに蓋をしているだけ、現に生じた被害を放置して何が裁判か、と言いたい。
歴史を思えば、何十もの挑戦が退けられた上に一歩前進した裁判例が生まれるので、飽く無くやるほかないのではあるが。

(弁護士 金岡)