包括的接見禁止を付されている依頼者がいる。
検察官が配偶者との面会にすら強硬に反対するので、まずは1回、面会させてみなよということで1回限りの一部解除決定を得て(検察官は準抗告したが棄却された)、某日に面会が実現した。
そこで更に11日後を面会日と定めて、二度目の一部解除を申し立てたところ、今度は職権不発動となったので準抗告を申し立てた。

既に面会実績のある配偶者の、つまり面会させても刑訴法所定の問題は生じないことが実証されたと言える配偶者の面会が職権不発動ということから推し量って、原裁判所は「11日前に面会しているんだから、まだ良いでしょ」等と考えているのではないかと想像され、そこで、準抗告の中で次のように論じた。

「実効的な罪証隠滅が行われる現実的なおそれが高いとまではいえないが、面会の必要性が無いから接見等禁止決定が適法になる」という論理は採用し得ない(逆に、一定程度、接見等禁止にすべき要請があるとしても、面会の必要性が高度であるが故に接見等禁止を維持する相当性を欠くと判断される場合は存在することについて、季刊刑事弁護99号79頁以下)。【中略】
一体、夫婦が社会における基本的な単位であることは人権規約上、肯認されており(社会権規約第10条1項は、「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、特に、家族の形成のために並びに扶養児童の養育及び教育について責任を有する間に、与えられるべきである。」とする)、「なぜ、配偶者と会う必要があるのか?」と問いかけるだけ、愚かである。【後略】

これに対する名古屋高裁のお答えが、次の通りである。
「原決定時点では某日に妻との前記接見が行われたばかりであったことなどに鑑みると、採用の限りでない」(田中聖浩裁判長、山田順子裁判官、大久保優子裁判官)

明示された排斥理由が「某日に妻との前記接見が行われたばかりであったこと」一点であるから、議論は噛み合っていると言える。噛み合っているがために、より救いがたい。
「原決定」は、某日から5日後に判断された職権不発動の前提となる包括的接見禁止のことであり、この時点で某日から11日後の第2回面会要望は提出していない。名古屋高裁は、この前提で事後審として、「某日の面会から5日後に、更なる面会への配慮(事後的には11日後の面会への配慮)をする必要性を欠く」と判示した、と理解することになるのだが・・「5日前に奥さんと面会したんだから、まだ良いでしょ」と正面から述べる裁判官が(それも3人)いるとは、どうしたことだろうか。

裁判官個人が、家族と頻繁に顔を合わす必要が無いという家庭環境や家族観をお持ちになることは自由だが、裁判に臨むに当たっては、憲法24条や国際人権規約の人権感覚で臨んで頂きたい。5日か11日か知らないが、さしたる弊害もないのに家族間を引き裂く公権力を行使して恥じないというのでは、人権感覚を疑われても仕方ないだろう。

(弁護士 金岡)