8月中に載せたかったが、なんやかんやで10月になってしまった。

8月は、敗戦の日が含まれており、その手の本が多く紹介される。最近とみに思うのは、時間をかけて築き上げてきた知見や証跡を無視して声高に、憎悪にも似た感情を煽る手口が多用されていることである(いまや総理大臣候補が、「外国人を逮捕しても通訳の手配が間に合わず、不起訴にせざるを得ない」等と、法曹実務家なら呆れて笑うしかないような嘘を声高に述べ、外国人への憎悪を煽って、それを喜ぶ層の票を漁ろうとしているのもその一つであろう)。
こう言う時こそ、なんであれ適切な資料にあたりながら丁寧に事実を紐解く必要がある。日頃、憲法9条を書面に書くことは先ずないが、8月はそういう書籍が多く、折角の機会を逃さず活用したいものだ。以下、印象に残った数冊を紹介する。

まずは「特攻――戦争と日本人」(栗原俊雄)。
特攻を命じられた若者の心奥を、最後の手紙や手記などから拾い上げているところが非常に読み応えがある。教育勅語の活用を叫ぶ政治家を含む連中が、知性も教養もない紛い物であることは、こういう書籍を読んでいれば間違いなく看破できるはずだ。

次に「荷風たちの東京大空襲」(西川清史)。
書籍は最近、出たものだが、直接経験した文豪らの手記を読み解くことで、当時の一端に触れることができる。複数の文豪が期せずして、極限状態に置かれると感情を失い何も感じられなくなることを指摘しているのも興味深かった。

あと「初めて人を殺す」(井上俊夫)。
中国で捕虜を銃剣で刺し殺す命令を受けた経験を踏まえた手記であり、靖国神社のこと、陸軍刑法のことなど、学びが多かった。

「深い教養の保持と高い品性の陶や」(弁護士法2条)などと大仰なことを言わなくても、時を逸せず地に足の着いた学びを得て、生かされていることを実感すれば、そう道を誤らないはずなのだがと思う。

(弁護士 金岡)