今日は午前1件、午後1件、警察の被疑者調べのための出頭に同行した。
事前に同席を申し入れ、断られ、じゃあ包括的に黙秘しますよ、包括的黙秘意思の確認のためには5分あれば十分ですよね、という感じの、例の同行である。

どちらの警察でも殆ど同じ展開で、最初の5分⇒弁護人との打合せ⇒再開し取調べの終了を宣言しておしまいとなった。
あちらの理屈では、休憩として処理しているので、再開し、取調べの終了を宣言し、取調べ状況報告書を示して署名を求めるところ(勿論、立ち会えない場合は署名に応じる余地もないのだが)まで進めないといけないらしい。
無意味な儀式だとは思うが、さほど害もないのでその程度は付き合う。

このような「準立会」については、弁護人がわざわざ現地に行く必要に乏しく、事務所から電話で対応する程度で十分ではないか、という意見も出てこようものである。しかし、依頼者の防御能力がよほど万全である場合を除けば、弁護人が現地に足を運ぶだけの価値は大きい。
第一に、「じゃあ包括的に黙秘しますよ、包括的黙秘意思の確認のためには5分あれば十分ですよね」という遣り取りを依頼者の目の前でやれる。依頼者が、論争を目にして、警察が(しぶしぶ)応じざるを得ないこと、此方側の正当性を確認することは、その防御力を高める。
第二に、警察は間違いなく5分では終えようとしないが、「包括的黙秘意思は十分に確認できたでしょ?」という遣り取りをしっかり行えば、黙秘権侵害になりかねない続行を阻止できる可能性が高まる(今日の二例も、続行要望はあったが、諄々と説明して納得を得て、正味5分で終わらせることが出来た)。更にこれを依頼者の目の前で行うことで、依頼者は、それ以上に取調べが続くことの違法性を良く理解できる効果も期待できる。
第三に、(滅多にないことではあるが)取り決めた時間で依頼者が戻ってこないような場合、担当官を呼び出すことになるが、やはり電話より居座る方が強力な手段である。

こういったことを考えると、手間を惜しまず、きちんと現場に足を運ぶことこそ、正しい弁護活動であることが分かる。

ついでに。
同席を拒否される時の言い回しは、「個別的にかつ組織的に検討した結果、立ち会いはご遠慮いただきたい」が使い回されているかもしれない。今回を含め、この半年で3回は聞いた言い回しである。
同席を認めるマニュアル整備ではなく、同席の断り方マニュアルの方を整備しているとすれば、実に警察らしい所業である。

(弁護士 金岡)