関東地方のS地裁に用事があったのでタクシー待ちのついでに法廷傍聴をしてみた。高知地裁のように弁護人席前のベンチが撤去されているところもあるくらいなのだから、なにかこう違った工夫の一つや二つ、あるかもしれないと。
で、まずは単独、一回結審っぽい事案(被告人は20代そこそこの女性)。
腰縄手錠付きで普通に入廷。弁護人は何もせず。
勿論、弁護人前のベンチである。
(つい先日、名古屋地裁で、なんと保釈中の事件なのに弁護人席前のベンチに座らされている被告人を見かけたから、上記弁護人は、「残念」ではあってもダメとまでは言えまいが)
拘置所職員が腰縄と格闘しているあたりで裁判官が入ってきたが、勿論、なにも起こらない。こういう風景を毎日数回も見ていれば、そりゃ、これが当たり前としか思わないようになるよなぁと思う。
弁護人が無為無策でも裁判官の意識の持ちよう一つで無用な人権侵害が避けられるというのに残念なことである。
もう一つ、現住放火の裁判員もやっていたので、そちらも覗いてみた。
そちらも身柄事件であったが、裁判員なので被告人は弁護人の隣に座っている。
始まった当初は、押送職員が弁護人と被告人との間に足の先を入れるくらいの位置関係と言われていたが、それはとっくに廃れていて、ここでも1メートル弱は離れて座っている。廊下を跨いで2つの法廷で、こと被告人の当事者性ということでは全く異なる風景が広がっていた。
なお、丁度検察官論告をやっており、読み方はアナウンサー調の訓練なしには出来ないだろう流暢なものだった(分かりやすいかどうかは別にして)。ただ、かみ砕いた言い回しは意識されておらず「エアコンのヨウユウ」「カセイ」など、一般には耳馴染みのない言い回しではないかなぁと感じた。
たまに他所の法廷を覗くのも面白いものである。
(弁護士 金岡)