刑事裁判において弁護人が学者の意見書(ここでは法律解釈についての意見書を念頭に置いている)を用意することは珍しくない。
これを弁号証として請求すると、検察官は判で押したように「法律解釈は裁判所の専権であるから不必要であり同意しない」という。
そもそも、この意見は意味が分からない。
「法律解釈は裁判所の専権」これは分かる。
しかし、裁判官は、特定の論点についての専門家ではない。例えば「一時使用と不法領得の意思」みたいな著名論点であっても、最新の裁判例や学説を日々渉猟している裁判官は存在しないだろう。
従って、「広く浅く」の裁判官に対し「それに特化した専門家意見」を提出し、必要な情報や考え方を補うことは、法律解釈が裁判所の専権であり、絶対に誤りが許されないからこそ、当然に必要な筈である。
裁判官任せにして、裁判官が(論告や弁論を踏まえた上ではあるとは言え)自分で調べた範囲で専門的な解釈を示せば良いかの理屈は、完全に間違っている。
さて、検察官が不同意にする意見書に対して、「反対尋問したいのか」と問うと、大多数の検察官は「反対尋問は想定していない」という。
であれば、裁判所が必要と判断して採用するかどうかに委ねれば良いと思うのだが(いわゆる「伝聞性は争わないが必要性を争う」意見)、そこら辺でごちゃごちゃするのが常である。
法律解釈についての意見書の証拠能力を考えると、裁判所の専門的知見を補う趣旨であるから321条4項(実務的には真正性に争いがないなら尋問を経ずとも該当性を認定できる)も考えられるが、321条4項を持ち出さなくても、そのうち公刊物に掲載されることも多く、そうなると法学雑誌と同様、当然に法廷に持ち込めるのではないかという考え方も成り立つ。
経験的には後者の扱いが多く、(戦略的に当該学者を主尋問したい場合はともかく、)弁論に添付して提出する扱いとなる。先日も名古屋地裁で、検察官は最後まで抵抗したが、裁判体が合議の上で弁論添付を認めると判断して、事なきを得た。
以上はあくまで、反対尋問を要しないという相手方の応訴態度が確認できた場合限定であるが、ごたついた時に知っていると役立つかもしれないので紹介しておく。
(弁護士 金岡)

















