さて、先日、示唆したように、岡山地判2026年4月15日を検討したい。

この事案は、弁護人が接見内容の録音のため録音機の持ち込みを申し出たときは録音機の事前検査及び事後の再生を伴う内容確認を可能にする「944号通達」及び、録音の持ち帰りを刑訴法39条の書類の授受として扱うとした「279号通達」に基づき、弁護人である原告が、持ち込みを申し出て録音機を持ち込むことを余儀なくされ(事件前に一度、上記各通達に基づく取扱いの説明を受けて接見を中止し、その後、事件当日の接見時に、接見室から、録音の申入れをしたという経過のようだが、無断で持ち込むだけの見識があったのなら、そのまま無断で録音しておけば良かった~なんとなれば何れも全き適法であるからである~という感もあるが、それはさておく)、事前事後の検査を受けたことについて、何れも秘密交通権侵害がある、等とした国賠事案である。

判決はまず、事後検査について、録音機による接見内容の記録化は「メモ行為の究極的な形態」に過ぎないと判断して、正面から秘密交通権の保障を受けると判断し、事後検査を違法とした。
但し「通信機能が搭載された機器による録音行為等であれば別異に解すべき余地があるものの」という断り書きがあるので、そこまで評価出来る判断でもない。何しろ、録音データの持ち帰りの許容性に関し、同判決は、弁護士法1条、2項を援用して、弁護士の高度の職業倫理を援用し、故意過失による録音データの流出により罪証隠滅等の事態を生じさせることは極めて例外的と断じている。であれば、通信機能付きだろうと、罪証隠滅等の事態を生じさせることは極めて例外的であることに違いはないはず(通信機能付きで過誤の情報流出~故意の情報流出は前記倫理性により考慮不要である筈である~が質的に増加するという経験則があるなら、刑訴どころか民訴IT化も夢のまた夢ということにならざるを得ない)なので、論理的に不整合である。先回も書いたが、通信機能付きであることへの非論理的拒絶反応には辟易する。

次に、事前検査については、ICレコーダーが新品であることの確認であり、接見内容の確認ではないから、秘密交通権の保障の趣旨を没却しないとして適法としている。おまけとして、弁護人を所持品検査の対象から除いた被収容者処遇法75条3項も、検査されないことの権利保障ではないとするが、やはり全く考えの足りていない判示である。
接見に何を持ち込むか、どのような接見をするかは、接見内容と密接不可分で、切り離すことが出来ない。接見に用いる道具の事前申告を、内容に触れないからと許容すれば、接見状況を録画する予定だとか、DVDを再生する予定だとか、地図アプリによる検索画面を示す予定だとか、筒抜けになり、弁護活動の秘密性が保たれなくなる。弁護活動は秘密性が保たれるからこそ、萎縮なく、行える。1年でも2年でも刑事弁護をやってみれば、秘密性の保障が刑事弁護の生命線であることは容易に理解出来ることと思うのだが、弁護士1年生でも分かるようなことを堂々と間違えられては困りものである。

本判決は、前記各通達の事後検査部分の違法性を認めたが(279号通達は、要するに録音体を宅下げ扱いする)、法令違反が具体的に争われていたわけでもないので、これに従って仕事した職員に違法はないとした。
これが、最判2007年11月1日(違法な通達に基づく誤教示に国賠責任を認めた事案)との関係でどうなのかはともかく、ここで指摘しておきたいのは、第一に、通達がどうだろうと、接見内容そのものである録音を再生して聞くことが刑訴法39条1項に反するという判断が出来ないでは刑事施設の職員は務まらないのであり、明らかに不当な判決であるということ。
また第二に、接見内容の録音録画の持ち帰りを宅下げ扱いしてくる検察官と、秘密交通権の保障を受けるとする弁護人の論争は、今に始まったものではなく、私自身が2007年ころ、法廷でそのような主張を受けて(責任能力を争う事案で初期の接見をビデオ録画し証拠提出したことに対し検察官が違法収集証拠だと主張した)論争になっているし、高野隆弁護士が2010年ころに同様のことをされているので同様の論争が生じていると思われるので、明示的に「通達の違法性」という形で争われたかどうかはともかく、接見内容の録音録画の持ち帰りを宅下げ扱いすることとの違法性については、何度も論争になっていたことは、少し調べれば分かるはずである(少なくとも法務省側は何度も報告を受けているであろう)、ということである。

ということで、遠慮のない言い方をすれば、最低限の、まだましな判決ではあるが、未だにこの水準で止まっている、という点で、個人的には特に評価に値しない判決である。

(弁護士 金岡)