先日、久々に日弁連刑弁センターにお邪魔し、昨今の証拠隠し事例についての事例報告を行った(本欄お馴染みの平間検察官の案件である)。

その議論の中で、証拠隠しを可能な限り防止するための制度論を問われ、日頃から考えていることとして、①制裁規定は重要だが、発覚しなければ制裁の発動のしようが無いから、隠しようのない可視化こそ重要である、②ドイツの制度を見習い、捜査過程を、いわば病院のカルテのような、一元化された情報集約に記録し、書き換えを不能にすることで、隠しようのない可視化を図ること、③よく存否が問題となる類型については、警察庁に保管要領を制定させ、その適正管理義務を明らかにすることが重要であると発言した。

制裁措置の必要性(①)は、季刊刑事弁護75号の小論文で、検察官が裁定命令に従わない事例があることを報告した際、言及したことがあるが、裁定命令の有無に関わらず、あるものをないと偽り手続を進めさせた場合に、幅広に、公訴棄却等の然るべき制裁を予定することが、いまや求められていると言えることは明らかだろう(先日の平間国賠地裁判決が、訴因変更義務や論告義務を認めたのだから、それに故意に違反した訴訟進行に残されているのは打ち切りだけだ)。
違法収集証拠排除⇒補強証拠がないから無罪、という展開が有り得るのだから、有罪獲得が不可能になる程度の制裁は、手続法の下では当たり前のことと受け止めたいし、嘘を吐かなければ良いだけのことなのだから、捜査側、検察側に何の負担もない制裁である。

保管要領の制定(③)については、本欄でも、デジカメデータの保管要領の話題(本欄2025年3月28日)を何度か取り上げたこと、また知られていることとして、警察車両のドラレコデータの保管要領の存在が挙げられるが、昨今では、パソコン、携帯電話端末データに焦点が当てられるべきであろう。
特に携帯電話端末データは、今時、携帯電話端末を持ち歩かない人は極少数であり、従って大多数の事件で一先ず押収され解析が検討されるのだから、その保全データや、保全データから専用ツールで抽出されたデータ(いわゆるUFEDデータ等)について、所在や保管期間を明示的に制定すべきは喫緊の課題と言える。
しかも、前記の報告会では、この種のデータについて、事件毎の仕分けもせずフォルダ分けもせず、ごちゃっとPCに放置する「東京流」が披露されたかと思えば、私の経験例では、異動になったついでに全部削除していく警察官、京都では「数週間で内容問わず機械的に消していく」やり方が主張されるなど、ひどいものであり、どれをとっても、証拠の適正管理義務の観点からは「嘘」としか思えないような内容ばかりである。
これで証拠隠し(や有利証拠の隠滅)が生じない、という方が無理であって、これ以上、第三者的監視措置を設けないまま捜査機関に証拠の管理を委ねることは許されないところに来ていると言える。

本題は、②捜査過程のカルテ化に関し、日弁連が「犯罪捜査の記録に関する法律」制定を求めていたことの紹介(前記の報告会で教えて頂いた)であるが、前置きが長くなったので、次回に譲る。

(2/2・完に続く)

(弁護士 金岡)