毎日新聞の本年8月26日付け記事を見て思ったことである。
非弁活動該当性が問題となる刑事事件であり、非弁性を争う被告人側が、非弁性を認める検察側の供述人Xの供述調書(不同意)をPDFにして、同業者(行政書士)に交付し、同業者らが非弁性を否定する立場から行政書士会の会議の場で肯定派のX批判を展開し、Xは出廷を拒むようになったという。
報道によれば、被告人の上記行為理由は「行政書士の友人3人に意見を聞きたかった」というものである。
で、検察が弁護人に抗議し、「井野憲司裁判長は、データを流出させた行為が刑訴法に抵触する恐れがあると指摘した上で『審議の運営に悪影響を与える可能性がある。慎重に行動するように』と厳重注意し、流出先にデータを削除させるよう求めた。弁護側は不同意とした供述調書の採用に同意し、井野裁判長は理事の証人喚問を取り消した。」という顛末であるという。
非弁性を争う上で、同業者に専門家としての知見を求めたいから、非弁性を認めるXの調書を同業者に交付することは、正しく防御活動であって、凡そ全く、目的外使用には当たらない。
敢えて言うなら、弁護人からその3名の同業者に接触して、弁護人から写しをお届けするようにした方が良かった、とは言える(被告人が勝手に行動した結果、勝手連的な動きを誘発して、Xの糾弾に繋がったようだが、それを避けることが出来たかも知れないからだ)。
しかし、そのような負の現象と、目的外使用かどうかとは、全く関係がない。目的外使用かどうかでいえば、目的外使用では無く、適切な防御権行使の一場面なのだから、検察の抗議は的外れであるし、裁判長のお説教も、削除要請も、違憲違法の代物である。記事だけを読めば、筋違いの抗議に屈して、そのツケを被告人に払わせているだけであり、適正手続に反する訴訟に堕していると観測される。
更に不可解なのが、弁護人が一転、不同意調書を同意してしまったことである。
記事からは、「争うのを無理と判断した」のか「証人が出廷出来なくなった詰め腹を切らされたのか」判然としないが、同業者3名が非弁性を否定するくらいなのだから、争える見込みはあるのだろう。
そうであれば、「証人が出廷出来なくなった詰め腹を切らされた」類だと想像するが、そうだとすれば、この弁護人は、その役割を果たせていない。正当な圧力だろうと屈するべきでは無いし、ましてや正当な圧力ですら無いのだから屈する理由は無い。憲法が保障した反対尋問権を易々と放棄出来るような場面では無かったはずだ。
あくまで記事を前提にしているので、前提事実誤認があればこの限りで無いが、記事を前提にする限り、こういう人々が刑事司法をダメにするのだと思わざるを得ない。
再審手続法制定騒動の中で、しれっと目的外使用規制が押し込まれ、通常手続と同じなのだからと強行された(割には、証拠開示の方は、明らかに整理手続における類型証拠開示請求権より後退しているのだから嗤える)のは記憶に新しいところだが、支援者らが、刑事記録の写しを識者に渡して闊達な防御活動を拡大していくことが、槍玉に上げられるだろうという懸念は、正鵠を射ている。
(弁護士 金岡)

















