本年6月付けで標記の書籍が発刊される。
帯の宣伝文句を引用するなら、「接見交通の現状と判例・学説の到達点を確認。接見妨害をめぐる国賠訴訟ケースを収録し、闘うための理論上・実務上のポイントを提供。」とあるように、第1部に主要な論点毎に研究者が論文を執筆し、第2部では、この分野の国賠を担当されている弁護士が事例報告をしているという趣向である。

私はと言えば、なぜか第1部の方に「接見妨害国賠を実践する」という小論を寄稿させて頂いた。なぜ第1部の方に・・というのは、依頼を受ける前からも、今以ても、謎であり、本来は第2部の総論を飾るべきだったのではとも思うが、第2部の総論は総論で別の弁護士が書かれているので、結局、こういう棲み分けである。

内容面であるが、第1部では、接見内容に及ぶ取調べの問題、電子機器問題、接見秘密の記載のある文書の押収等の問題、ついでに接見分野での弁護士懲戒事例と、大体、知りたいところは網羅されていよう。(私の小論は、接見国賠に臨む心意気、いざという時の心構えと証拠方法、あとは訴訟理論上の実務的なところをちらほら、で、少々というか毛色が違う)
第2部では、各地の接見妨害国賠として、先陣を切った電子機器持ち込みに関する竹内国賠をはじめ、接見内容聴取、これに隣接する押収問題、更には第三者への伝言と弁護人宛信書の問題など、多種多様な事案(係属中のものも含む)が収録されている。争い方や理論構成も含め、刑弁の委員会活動に相当深く関わっていなければ、これほどの情報量は得られないだろうと思わされる。

第2部で現場の弁護士が口々に言うのは、接見秘密の絶対保障はまだまだ確立されておらず、裁判所の主流は、どちらかと言えば、捜査の必要性との相対化に流れがち(なお、刑事施設管理との相対化については、さすがに少数説以下、絶無に近いであろうとは思われる)にも窺われることへの懸念と、絶対秘密の確立へ向けての更なる努力・研究の必要性である(第1部でも、例えば石田論文が「接見交通権の絶対的保障に向けた道程」という項立てで論じている。44頁。)。
弁護士全体に課せられた使命と言えるだろう。

「接見国賠闘争の歴史という価値のバトンをつなぐ」(村岡美奈弁護士)、「被疑者・被告人が社会から切り離された時に、頼りになるのは弁護人しかいない」(同)、「問題の改善はわずかずつしか前進しない。そして、問題に気づいた誰かが具体的な行動を取らない限り前進することはない」(花田浩昭弁護士)、あたりの気概(当然のことではあるが、この気概を常時、保って実務に臨むことはそう簡単なことではない)に触れられる点でも、価値のある書籍ではないかと思う。

(弁護士 金岡)