先日、長野地裁松本支部2021年4月20日決定を取り上げたが、その後の情報に接し、再度、取り上げることとした。
基本事件は、住居侵入幇助・強盗致傷幇助被疑事件である。
4月20日の決定では、当初勾留時に付された接見等禁止決定について、主位的に全部取消を求めた部分は排斥し、予備的に、例の糧食等の差入禁止部分の取消のみ認めた。
主位的請求を排斥した理由は、①「事案の内容や証拠構造、被疑者及び共犯者らの供述内容等に照らせば、本件事案における被疑者の役割、関与の程度に関して、被疑者が共犯者ら関係者に働き掛けるなどして罪証隠滅を図るおそれは高く、勾留に加え・・接見等を禁止する必要がある」というものであった(山城司裁判長ら)。
同事件について、山城司裁判長ら全く同じ裁判体に対し、勾留延長決定に対する準抗告が係属したところ、これが全部認容され、勾留延長決定は取り消された。
その理由は、②「当初の勾留期間満了までに必要な関係者及び被疑者の取調べを遂げることができなかったことにやむを得ない事由があったとは認められない」、③「勾留期間を延長して被疑者立会いによる引き当たり捜査を行うことが被疑者の起訴不起訴をを決するために必要であるかについては疑問がある上、・・これを当初の勾留期間中に実施できなかった事情もうかがわれない」等というものである(松本支部2021年4月26日決定)。
まず、②③を通じて、「やむを得ない」かどうかの審理をしていることが、当たり前なのだけれども、大事なことだ。しばしば、「捜査が積み残しになっていることについて捜査機関の怠慢があったとは認められない」という排斥理由に出くわす(怠慢だ怠慢だと主張する弁護側にも言葉の選び方において非があるかも知れない)が、怠慢かどうかで決まるのではない。やむを得ないかどうかで決められなければならないのだ。
また、③のように、現場引き当たりが起訴不起訴に必要であることに疑義を呈しているのも、良い。もとより、捜査段階の準抗告審裁判所に、どのような捜査事項が起訴不起訴を決するに不可欠かを見きわめるのは容易ではないだろうが、本件の場合、前叙の4月20日付け決定に照らすと、「被疑者の役割、関与の程度」が起訴不起訴を分ける事案であり、そうであれば、被疑者が良い感じに現地案内できたかどうかは(犯人性が争点なら別かも知れないが)不可欠ではなかろう、という見立てであったと思われる。
そして何より、①のとおり、4月20日の決定によれば、「被疑者の役割、関与の程度に関して、被疑者が共犯者ら関係者に働き掛けるなど」の具体的蓋然性があると判断されている。勾留延長時点(4月22日のことだそうだ)で、その具体的蓋然性に変動はあるまいから、勾留はすべき被疑者なのだろう。
勾留はすべきだが、延長は認めない。いかに釈放が不適でも、刑訴法の原則通り10日以上は認めない。これまた、当たり前のことではあるが、なかなか簡単なことではないだろう。現在の水準において、毅然とした決定と評価しなければなるまい。
なお、4月22日の飯田簡裁の延長決定に対し、弁護人は即日、準抗告を申し立てたが、折から土曜日にかかったこともあるのだろう、回付にあって判断は4月26日まで遅れたとのことである。
支部における事件の配点、特に合議事件の配点は、弁護人の立場から見ていても良く分からないところがあり、先だっても、四日市支部が津地裁本庁から裁判官を呼び集めて検察官の保釈許可決定に対する準抗告を即日棄却した件を取り上げたが、そういう運用があるかと思えば、(想像であるが)当初申立先の地裁飯田支部⇒地裁松本支部と回付されて4日も釈放が遅れる(意地悪な見方をすると、事実上4日の延長になっているから、心置きなく毅然と全部取消ができたのかもしれない)事態も起きる。
愛知界隈でも土日の準抗告事件についてはあれこれ耳にするので、支部の地域は、こういうのを機に、運用を明確化し、手続的な遅れが生じないように整備を行っておく必要がある。
(弁護士 金岡)