DVDにせよ、BDでもそうだが、検察庁は証拠開示にあたり4条件を付することが一般的である(なお、誓約書を差し出させる方式と、「こういう条件なので異議がなければ謄写されたい」という言いっ放し方式とがある)。
① 枚数は1枚
② HDD等に更に複写してはならない
③ ウェブ接続中のパソコンで再生してはならない
④ 弁護活動終了後は消去しなければならない

いずれも程度差はあれど、不便から弁護活動への支障の領域にあり、且つ、殆ど無意味な条件である。時に裁定請求に発展することはあり得べきことだが、大方の裁判所が、①を人数分に緩和する程度でお茶を濁す。このほど某弁護士から提供頂いた名古屋高決2022年3月8日も、まだそこ止まり?という、やや進歩したものの同程度であったようだ。

曰く、①については、データ流出防止の観点から枚数制限の必要はあるも、1枚を弁護人間で遣り取りすることで却って紛失するかもしれないし、1枚に限定することで弁護活動が遅くなる、適正管理義務を負う弁護人に②③④の条件を付せば問題は少ない、等として、人数分を認めた。
他方、③については、取り調べ録音録画の流出防止の観点から合理的な制限であるとし、②についても特に理由を付することなく流出防止の観点から支持した原決定を追認した。
やや新しいところがあるとすれば、④について、「弁護活動終了時」は弁護人において合理的に解釈すれば足りるとして、「いつ終了したか」は弁護人の裁量判断権限を付与したところだろうか。

まず、①②についてみれば、時に数十枚に及ぶDVDを一枚一枚、取り出したりしまったり、持ち運んだりドライブに挿入したり、するよりも、一台のHDDに放り込んでまとめて管理した方が、不慮の紛失事故などは少ないのではなかろうか、と思うところである。たくさん、ばらばらしているから、亡失しやすい、と考えるなら、弁護人が一台のHDDにまとめるなど、その適正管理義務に基づき適正な形態を選ぶことを禁じる理由はあるまい。たくさん、ばらばらで管理せよ、と義務付けることに何の意味があるのだろうか。適正管理義務条項で十分ではないだろうか。
なお、見過ごされているようだが、こと被収容状態にない依頼者がいる場合には、依頼者にも複製データを交付できるようにすべきことも、指摘しておきたい。一般人はデータを流出させてしまうかもしれない、といって「差別」するなら随分な話である。事件記録を居酒屋に置き忘れたなどと報道される裁判官や警察官が後を断たない中で、一般人は管理能力が劣るからだめ、などと言えた義理ではなかろう。

次に③であるが、周知の通り民訴は一足先にIT化が進み、裁判官は「準備書面データを共有フォルダにUPしておいて下さいね」と要望するようになっているし、弁護士のオンラインパソコンを裁判所のウェブ会議システムと繋ぐようになっている。
とすれば、同じく機密情報を含む民事訴訟では、既に機密情報入りPCをウェブ接続し、それどころかクラウド上にUPすることを許容しているのに、なぜ、刑事裁判の世界では依然としてオフラインパソコンでなければならないのだろうか。
古くさい、しきたりを踏襲しているだけで、思考停止の類いと言われても仕方ないだろう。

最後に④は、控訴審弁護人に引き継げるかとか、再審準備中の元依頼者に交付(利用させることが)できるかとか、そういった問題に関わるが、第1審弁護人において「再審準備中だから終了していない」と解釈して良いなら、まあ、愚にもつかない条項だと言うだけで残しておいて実害はなかろう。

そういえば、謄写の際に要求される空のDVDにつて、「うちのHDDに入れてよ」と提案したことがあるが、なんでも、ウィルス検査との関係で新品未開封の媒体にしか入れられないと断られた。
それにしても、今時のノートPCは基本的にCDドライブがついていないが、法廷でDVD媒体を再生するために逐一、外付けドライブを持ち歩いている弁護士がどれほどいるのだろう。妨害の度合いは大きく、殆ど理のない(利のない)条件に違いない。

(弁護士 金岡)