御提供頂いた裁判例の紹介である。

本年9月16日付け、勾留決定に対する弁護人準抗告棄却決定
「・・(2号、3号に加え、)勾留の必要性もある。被疑者を勾留した原裁判に誤りはない。原裁判後被害者と示談が成立したこと、仕事の元請先会社の代表者が監督を誓約したこと等を踏まえても、現時点において勾留の理由、必要性は認められる。」(岐阜地裁、出口・濱口・奥野)

本年9月16日付け、勾留期間延長決定
2号及び3号
やむを得ない事由としては「被疑者の供述の裏付捜査未了、被疑者の取調べ未了」(岐阜簡裁)

本年9月18日付け、勾留期間延長決定に対する弁護人準抗告全部認容決定
「・・既に被害者と示談が成立している。これらの事情に照らせば、原裁判時点において、現実的、実効的な罪証隠滅のおそれは小さい。・・・元請け先会社代表者が・・・監督を誓約していることも考え併せれば、逃亡のおそれも大きくない。更に必要な捜査のために勾留を継続する必要性は乏しい。勾留期間を延長するやむを得ない事由があるとはいえない。」(岐阜地裁、出口・濱口・桑原)

こうして並べてみると、問題は言わずもがなであろう。
9月16日時点で、示談や監督誓約を考慮した上で、2号、3号、勾留の必要性を何れも認めた準抗告審が、9月18日時点で、示談をも挙げて「現実的、実効的な罪証隠滅のおそれは小さい」とし、監督誓約を挙げて「逃亡のおそれも大きくない」としている。勾留要件を相当に希薄化、抽象化しない限り、9月18日時点の評価が妥当するなら9月16日付け決定は誤りであっただろう(9月18日付け決定は、その体裁において、9月16日付け決定を踏襲して2号、3号、勾留の必要性を何れも肯定する前提で、やむを得ない事由を否定しているが、理由付けからすると無理がありすぎる)。

担当弁護人は、2日で何が違うんだ(左陪席以外全部同じだよ)とぼやいていたが、全くその通りである。
9月16日時点で、9月18日のような評価、判断が出来なかった理由はなさそうであり、2日、釈放が遅れた理由は決して説明できないだろう。違憲違法にも2日も余計に収容された被疑者は浮かばれまい。

なお、裁判所は、勾留期間延長に対する準抗告では専ら「やむを得ない事由」のみを審理し、勾留要件を問題としない傾向がある。9月18日付け決定でも、どう考えても2号3号ないし勾留の必要性を否定する論調なのに、無理矢理に、やむを得ない事由に持ち込んでいる。しかしこれは悪しき思考停止である。当初勾留から10日も経てば、勾留要件に相当の変動が有り得ることは当然であり(それこそ示談なり、監督誓約なり・・10日も社会から隔絶されたことで勾留の必要性自体も虚心に見直すべきである)、一から勾留要件を審査する精神を持たなければ令状裁判は担えまい。

(弁護士 金岡)