以前、本欄にて「確定記録の閲覧は権利であり、従って、部分的に不許可にするなら不許可部分を明確に特定する必要があると思うのだが」と書いたことがある(2022年8月4日付け)。

その原因の一つは、どうやら此方側にあったかも知れない。
というのも、無闇にマスキングされると困るので申請理由を明確にするように心がけ、その手の遣り取りをしているうちに、「但しプライバシー部分を除く」と書くように言われたことがあり(理由=その方が円滑に行くからと。下手をしなくても一月くらい平気で待たされる世界なので、円滑さの誘惑は強い。)、その後どうやら、申請に際して定型的に「但しプライバシー部分を除く」と書くようになってしまっており、「何でこれがないのか」と尋ねた時に「但しプライバシー部分を除く」という申請じゃないですかという反論を喰らったからである。

良かれと思って書いたことが徒になった観がある。
今後は余計なことは書かず、プライバシー部分もしっかり申請対象に含め、不開示にするなら不開示にするで、きっちりとした不開示通知を受けた方がましだと思った(どんなに杜撰な不開示通知でも現状、不服申立てはできないとされているが、あまりにひどければ裁判実務を動かせるかも知れない)。

因みに、今回、(住所は必ず閲覧対象に含めるよう事前に申請してから)Aさんの確定記録を見に行くと、Aさんの住所が残されている調書と残されていない調書とがあり、不可解に思ったが、「本籍 ×× 住所 同上」だと、本籍までばれてしまうので住所の方を不開示にしている、という説明を受けた。
同じ住所が開示されているのだから、本籍をマスキングするのが妥当だとしても、本籍を推知させる住所の記載を不開示にするには、やはりきちんとした不開示通知が必要なはずだが、それはされていない。あちら側に立てば、本籍を推知させる住所は本籍というプライバシー情報と一体のものとして申請対象外になる(「但しプライバシー部分を除く」と言う申請の場合)ということになるのかもしれないが、やはり杜撰な処理だと思う。
結局、「但しプライバシー部分を除く」が悪いのだから、今後はこれは絶対にやめておこうという結論である。

(弁護士 金岡)