またか、という話である。
本欄で時々、取り上げる話題であるが、勾留準抗告審などの局面で、係属部が分からず、補充の書面を出そうにも出せないとか、判断が即日かどうかが分からずお迎え体制をどうするか判断が付かなくなり困る、ということは、そこそこ共有されている経験だろう。
幾つかの点で改善を求め、一定の成果が上がったことは過去に本欄で報告したことがあるが、所詮は人治の仕事なので、顔ぶれが変われば元の木阿弥、ということもある。

今回、保釈却下に対する準抗告を午後4時台に提出したが、その後、待てど暮らせど、何の連絡も無い。午後4時台の申立だと午後8時くらいの判断も有り得ると思い(往時は23時台に逆転許可決定が出たという経験もしたが、まあ最早、時代錯誤かも知れない)、電話連絡に神経を尖らせていたが、音沙汰無し。22時を回ったあたりで「帰りやがったな・・」と、諦めた。

そもそも係属部が分からなければ、連絡のしようもない。
連絡がとれれば、判断が翌日送りかも分かろうものなので、係属部が伝達されなかったのが第一の問題である(これは名古屋地裁全体の問題であるから、所長宛に抗議文を提出することにした。現所長は就任会見で「信頼される裁判所として、質の高い司法サービスを提供できるよう取り組む」と述べておられるので、係属部伝達網を直ちに作って下さるだろうこと請け合いである。)。
また、判断が翌日送りと分かれば、それはそれで(合理的な理由がなければ抗議するけれども、ともかく、)「今日の判断は無いので明日に備えて下さい」と、身元保証人に連絡して、緊張体制を解いて貰えるだろう(私も電話に神経を尖らせなくて済む)。自分たちはさっさと帰宅し、こちらには即日判断が有り得る前提での緊張体制を強いる、考えが浅いとしか言いようのない仕打ちである。自分たちの裁判が「人」を扱っているという弁えがあれば、このような考えの浅い仕打ちはしないのではないかと思われたので、係属部(名古屋地裁刑事第4部)に対し抗議文を提出した。

以下は、その締めくくり部分の転載である。

(転載)
第3 終わりに
先に述べたとおり、係属部が分からず補充資料の提出が出来ないとか、係属部と連絡を取る方法が無く困惑した、という経験は、刑事弁護人において少なからず共有されており、当職も、ことあるごとに、御庁に対しても改善を要求している(例えば、当弁護人が開設しているウェブサイトにおいて、後掲脚注の通り、2018年8月31日付けや2019年3月18日付けで公開しているもの参照)。
そのような経緯がある中で、今回、係属部の連絡すらなく、また、弁護人が深夜の連絡に備えて待機していたというのに断りも無く判断を翌日送りにして帰宅する、などという、防御権軽視も甚だしく、また、関係者への最低限度の礼譲すら弁えない事態が生じた。
身体拘束にかかる裁判は、裁判所の(権利では無く)責務であり、その向こうには、自由の回復を希求する被収容者や、そのために身を粉にする身元保証人らがいる、ということを少しでも認識していれば、今回のように、関係者を無視して自分たちだけさっさと退庁する、というような行為に出ようとは思わないだろう。
自由の回復を希求する被収容者や、そのために身を粉にする身元保証人がいることに思いが及ばず、書類を右から左に動かす程度の仕事に堕しているのではないかと感じざるを得ない。
よって、頭書の通り抗議する次第である。

(後日談)
抗議文を出してものの2時間で、「いずれも連絡すべきことを書記官が失念しておりました」という謝罪が入った。「秘書が秘書が」の裁判所版?という感じしかしないが、まあ、そういう謝罪があったということは記録しておこう。

(弁護士 金岡)