控訴保釈が認められた控訴審の判決で再び実刑が言い渡された事案である。
従前は、判決期日の出頭義務がなかったため公平を期して即日収容しない扱いであり、従って実刑判決後も普通に帰宅できたから、高裁で構内接見するという展開にならなかった。
しかし刑訴法「改正」により保釈中の被告人の控訴審判決期日出頭が義務になり(刑訴法390条の2)、検察庁も一律即日収容に方針を変更した。その結果、判決後は高裁で構内接見するという展開になる。

かくいう私も、今回初めて高裁で構内接見を申し入れたのであるが、(名古屋地裁の場合、押送担当機関ごとで構内接見場所が変わり、そのたびに職員がまごつくことが割とあることもあって)はてさて、高裁での構内接見はどういう流れになるのだろうかと、少し好奇心を抱いて観察していた。

案の定、高裁刑事受付の担当者がまごつき始め、待たされること10分(次の予定との関係で接見時間がなくなった場合は国賠を起こす必要が出てくるので、そうならなかったことは幸いであった)、地裁の刑事事件受付に同行を求められた。なんでも、接見室の鍵が地裁の刑事事件受付保管なので、取りに行く必要があるという。
それはいいけど、申込用紙は書かなくていいのか?というと、申込用紙も地裁の刑事事件受付にしかないという。
地裁に高裁用の書式があるのだろうか?と思って行くと、実は高裁用の書式はなく、地裁用の書式の宛名を訂正線で訂正の上、申込用紙を記入することとなった。

既に本欄で取り上げているように、刑訴法「改正」により、(少なくとも名古屋の本庁界隈では)控訴保釈は大きく減少したのではないかというのが私の観測であり、統計上の数値の示唆するところである。控訴保釈が減少すれば、勢い、控訴保釈からの実刑判決による即日収容→構内接見の流れも減少し・・・書式すら作られていない手抜かりぶりである。

実刑判決直後の構内接見は、依頼者の心情安定のためにも、その後に早急に再度の保釈に動いていくかどうかを決定し準備に進むためにも、つまり防御権保障において欠かせない手続である。
名古屋高裁が、高裁での構内接見に意を用いず書式すら用意していないという体たらくは、いかに被告人の防御権保障を蔑ろにしているかの証左であろう。一事が万事というように、どこに目が向いているか(いないか)が露呈した、この出来事には、非常に残念な思いをした。

(弁護士 金岡)