1.この問題への私の立ち位置は既に書いた。従って、成立間際の攻防なるところへ至っているのを見て、ただただ暗澹として気持ちは浮かばれない。
ところで、世論調査によると安保法制の成立に慎重な意見が多数なのに政権支持率が上昇するという現象は、どう考えたらよいのだろうか。安保法制を第一の指標にしていない人が沢山いる、ということだろうか。憲法が破壊される(これは単に9条の問題だけではなく、憲法と国家権力との構造的関係の破壊である)より深刻な問題があるなどとはそう思えないのだが。世論調査結果が操作されていると考えた方がまだしも納得がいく程である。

2.憲法論議が俄に喧しく、これまで手を伸ばしていなかった分野の憲法関連書籍も豊富に紹介されているので、時間の許す限り読むようにしている。最近だと、ジェームス三木「憲法はまだか」がおもしろかった。最後の一節を引用しておく。

「戦争の放棄を宣言し、軍隊を持たないことで、外国の侵略は阻止できると考えるのは、甘いかもしれない。だが理想を持たない人間には、生きている価値がない。
日本は、壮大で崇高な実験国家として、歩み出したのである。この実験をつづける勇気と、軍隊を持って戦争をする勇気と、どっちが尊いかを考えたい。」

政治家に聞かせれば、甘っちょろい、攻め込まれたらどうする、というのだろうけど。そんな議論、とっくに通過して、ここまで来たのではなかったのかなぁ。(徴兵制に繋がると不安を煽ってけしからんと言うが)実態もよく分からない安全保障環境の変化で不安を煽っている側に言われたくはないものだ。

(弁護士 金岡)