性風俗業者を新型コロナ対策の給付金の支給対象外としたことの是非が問われた訴訟の最高裁判決は、4対1で合憲判断であった。少数意見は、件名の宮川反対意見であり、明確に違憲と断じたものである。

本欄では上記訴訟を取り上げたことがあり、「合法に行える性風俗産業を、給付金の対象にすることが国民的理解を得られない『一段、低いもの』に決め付けることは許されまい。それ自体が差別である。」と断じた。
https://www.kanaoka-law.com/archives/1477
それだけに今回の判決は残念だが、違憲の少数意見がついたことは、この問題が過渡期にある可能性、期待を感じさせるものである。

宮川反対意見は、次のように指摘する。
「本件特殊営業の事業内容に着目し、給付対象から本件特殊営業を行う事業者を特に除外するというものであり、本件特殊営業を行う事業者及びその派遣する接客従業者が、あたかも社会的に見て劣位に置かれているという評価・印象を与え、あるいはそれらの固定化につながりかねない効果をもたらすおそれがある」
「本件特殊営業については、接客サービスを提供して生計を立てる接客従業者が存在するとともに、当該サービスを求める顧客も存在しており、一定の社会的な需要があることは否定し難い・・・法律上接客従業者の尊厳を害するものと位置付けられていないことも考慮すべきである」
正に我が意を得たりであり、これが真っ当な人権感覚でなければならない。
今回の最高裁判決は、今後も同様の行政判断が行われることを是認する。その結果、性風俗産業蔑視は更に拍車がかかり固定化するに相違ない。そのような事態は、具体的蓋然性をもって懸念される(裁判所が勾留に用いる罪証隠滅や逃亡の、抽象的な蓋然性とは訳が違う)。

かつて裁判所は、特定の性的嗜好の、性的意味合いのある投稿画像であった点を問題視して特定の裁判官を攻撃した事績がある。
性的指向や性風俗産業を蔑視する総本山が他ならぬ裁判所であることを、銘記しなければならない。

(弁護士 金岡)