件名だけでは何のことか分からないかもしれない。
少し説明を加えるなら、弁護士による保有個人情報開示請求代理に際し、①開示請求書の代理人表示に代理人の私的住所(法律事務所ではなく自宅)を記載する必要があるか、②代理人の本人確認書類として自宅の住民票を提出する必要があるか、③委任状の法律事務所の表示に自宅を記載する必要があるか、という話題である。

これだけ説明を足しても何のことか分からないかもしれない。
それも道理である。
よくもまあ、こんな馬鹿げた話に巻き込んでくれた、と私自身が思っている。

これをやらかしたのは、熱田税務署である。
熱田税務署に対し、任意代理人として依頼者の保有個人情報開示請求を行い、法律事務所の表示をした委任状や、弁護士身分証等を提出した。
すると熱田税務署は、上記の通り、自宅の方を書け、自宅の住民票を出せ、委任状に自宅が書かれていないから補正しろ、等と難癖をつけてきた。
このような難癖に付き合う義理はないので、礼儀正しく怒鳴りつけた上で突っぱねたところ、なんと、書類不備を唯一の理由とする不開示決定を受けたので審査請求に及んだ。

この程、無事に、不開示決定の取消を得たので、これを報告する次第である。

国税庁2025年6月20日決定(官公1-31)。
決定理由によれば、①について、(弁護士業務による任意代理請求である以上)法律事務所の所在地及び電話番号を記載することがむしろ相当である、②について、弁護士身分証及び法律事務所の名称等の記載のある健康保険証で問題ない、③について、委任状に自宅の住所等の記載がないことに問題はない、というものである。

そりゃそうだろ、と思う。
弁護士業の委任状に事務所所在地表示がないとか、自宅が記載されている、などとは考えられない(そんな委任状を書かされたら依頼者が困惑するだろう)。であれば所要の手続上の確認行為は法律事務所を起点にするしかない。それだけの話である。国税庁が、法律事務所の表示の方が「むしろ相当」というのも当然である。

よくもまあ、ここまで考えなしの対応をするものだと驚く。
保有個人情報開示請求が2024年7月、不服審査請求を行ったのが2024年9月、それから処分庁の反論やら諮問先委員会の答申やらで、決定は2025年6月、つまり丸一年の浪費である。丸一年、事件処理を停滞させ、私に散々無駄な起案をさせた責任は、誰がどう取るのだろうか。とりあえず税務署の親玉が頭を下げに来るべきだと思うが、まあどうせ謝ろうという知性も理性も弁えもないだろう。

職業柄、保有個人情報開示請求代理は、例えば矯正局に被収容者の医療記録の開示を求める等で散々やっているが、このような考えなしの対応をされたのはこれが初めてである。
従って殆ど参考にならないかもしれないが、もし同様の対応を受けて困惑している向きがあれば参考になれば幸いである。

(弁護士 金岡)