本欄でよく取り上げている、平間検察官が検察官証人の証言と明らかに矛盾し当初訴因を成立し得なくするLINE履歴を隠したまま、検察官証人の証言を信用できるとする虚偽論告を行い、差戻し前第1審で有罪判決を騙し取った件である。
この程、検察審査会の結論が出されたので(既にメディアが報道しているようである)本欄でも報告しておくこととする。
申立罪名は、①虚偽無因公文書作成・同行使、②公務員職権乱用、③特別公務員暴行陵虐である。検察審査会は、①について、論告は意見を記載するものに過ぎず内容証明文書でないという理由で否定し、②について、権利利益の具体的実現が妨げられることを要するがそのような被害結果が生じていないことを理由に否定し、③について、論告が真実と反するものだとしても、検察官の職務行為を逸脱する違法不当な陵辱加虐と評価することは相当ではないとして否定した。
なるほど、市民の良識とやらは、検察官が殊更に真実と反する論告を行ったとしても、それは職務行為から逸脱していない、或いは陵辱加虐ではないと評価するらしい。自分が被害者になって吠え面かくなよ、とは言いたくなるが(職務行為からの逸脱を否定したことには率直に言って異常性を感じる。検察官が虚偽主張することも職務のうちと言える、というのはどういう了見だろうか。)、どうせ発展的な刑法の議論が出来るはずもないと思っていたので、落胆するもしないもない。
議決には、次のような付け足しがされていた。
「確かに、本件裁判の控訴審で開示された本件裁判で証言をした2人の証人間でやりとりされたラインの履歴が、差戻審の無罪判決の大きな要因になったことは明らかであり、もしも、被疑者(平間検察官)が、差戻前第一審の段階で、上記履歴を申立人側に開示していれば、もっと早く無罪判決が出されていた可能性を否定できない。申立人が、被疑者が上記履歴を開示しなかったことを証拠隠しと批判していることについて、当検察審査会もその心情は理解できるし、被疑者がなぜ上記履歴の一部(詐欺事件の公訴事実頃のやりとり)を入手した段階で申立人側に開示しなかったのかという疑問もある。そのため、不開示の経緯は検察庁において詳しく検証されるべきであると考えるが、その問題と本件被疑事実の要旨にかかる不起訴処分の当否は分けて考えるべきである。」(2025年7月24日付、名古屋第二検察審査会決定)
要は、検察官が証拠を隠して有罪判決を騙し取ることは、現行法上、処罰できないということが問題なのであろう。
考えてみれば、被疑者被告人側に証拠隠滅等罪があるのに、検察側に同様の犯罪類型が用意されていないというのは平仄が合わない(・・無罪証拠を隠す行為も、文理上、証拠隠滅等罪に該当するような気もしてきたが、今後の検討課題としたい)。刑訴法上、被告人側には証拠の目的外使用規制が課せられるのに、検察官に証拠保管上の非違行為についての制裁規定がないというのも、平仄が合わない。
役人は犯罪しない、などという、お伽噺が通用しないことはもう分かりきっているのだから、(なんでもかんでも新規に特別刑法を作ることは全く賛成できないが)このあたりは立法手当が必要だということが明確になっただけでも、よしとしなければならないのだろう。
さて検察庁は、本件について「詳しく検証」するだろうか?身内に厳しく、有罪判決を騙取する罪の立法提言でもしてくれるだろうか?
見物である。なお、本件に関しては国賠訴訟も進行中であるが、国側はなんと、平間検察官が隠したLINE履歴は、検察側証人の証言と矛盾しないという、刑事事件の控訴審担当検察官すら捻り出せなかった珍説を主張して抵抗している。検証して膿を出そうとしているようには見えない。
(弁護士 金岡)