受任して直ぐに保釈を得ていたが、公判が間延びする間に別地方の裁判所で勾留される展開を辿り、そこで此方の事件で証人尋問、という案件である。
当然ながら、SBM/腰縄手錠の申し入れを行った。

裁判所(名古屋地裁)の反応は、「当日は被告人の精神状態を総合考慮して、傍聴人を入れる前に全て外します。」「着席位置は先生の真横にします。」というものであり、傍聴人出し入れ型の腰縄手錠、SBMが何れも実現した。
もっとも、前記の通り「被告人の精神状態を総合考慮して」という余計な一言が付されており、穿った見方をすれば、一般化はさせないぞという強い意思が垣間見える。

弁護人の性としては、「こと本件では」という固有の事情があれば、言わざるを得ない。本件では、長らく保釈されていた、家族の傍聴、罪体に関する証人尋問、被告人にやや情緒不安定がある、といった要素があり、例外を認めることは容易かったのだろうが・・わざわざ理由を付けてくるか、というところに、この問題の根深さを感じた。

修習生が何名も傍聴していたので、彼/彼女にとって記憶に残る出来事であればと思う。

記憶に残る出来事といえば、今時では珍しくないが、「10年以上の同種前科」「10年以内の同種前科の判決文」の取り扱いを巡り、法廷で議論となり、結局、「10年以内の同種前科調書」以外は全て却下された、というのも、修習生には記憶に残る出来事になったのではなかろうか。
10年という線引き自体に根拠はないので、ここは油断せず考えていくべきところであるが、不当な人格評価に繋がる雑音は的確に排除する、というのは、手続的に重要である。

(弁護士 金岡)