名古屋地決2025年10月25日である。
私の担当事案ではないが、安田庄一郎弁護士より提供を受けて紹介する。
事案は、2025年9月に少年院に収容されたばかりの少年が、一月強後に、別件で逮捕勾留されたというものである。担当弁護人は、一般論としても、少年院収容中なのに勾留事由が生じるのかに疑問を持っていた。
この点は、裁判実務は少年院収容中だからといって直ちに2号3号を否定しないように観測されるが、しかし捜査したければ少年院に来れば良いだけの話であり、矯正処遇を中断してまで勾留を認めるべきようには思われず(特に本件では、別件(つまり今回の被疑事実)について、前件段階で既に認めていた事情があり、より、矯正処遇の利益を強調して良さそうであった)、そういった問題意識をぶつけるのに格好の事案であった。
決定は次の通り。
「(2号3号事由を認定した上で、しかし)少年院に入院中であることから、上記罪証隠滅及び逃亡のおそれが高いとはいえない。また、・・今後想定される捜査が被疑者の勾留を必須とするとまでは認められない。」「加えて、被疑者が少年院で矯正教育を受け始めていること、弁護人の申立書によれば被疑者が上記少年院送致決定前の調査段階で本件についての犯行を自認していたとうかがわれることにも鑑みれば、少年院における上記教育を中断させることなどが被疑者の健全育成に及ぼす影響は軽視できない。以上を踏まえれば、同人を勾留することにつきやむを得ない事情があるとは認められない」(名古屋地決2025年10月25日、大村裁判長)
まあ良い部類だろう。
少年院収容中なのに2号3号を認めるところは、裁判所に定着している、全く理解できない評価であるが(例えば3号について、準抗告事例99所収の事例❻参照)、今回、「必須」かどうかが検討されたのは良かった。少年院に通いつつでは遂げられない捜査なんて存在しないだろう。
更に、(同時処理義務とはいわず)収容前に処理出来たのに今更に連れ戻す乱暴さも、裁判所は的確に咎めている。
平たくいえば、今回の捜査機関の手口は横着すぎ、少年の健全育成の理念を無視したものであるから、勾留取消は当然である。
仮に前件調査段階で別件(本件被疑事件)に言及していなかったらどうなるか?は興味深いところであるが、連れ戻すことが必須では無いことは同様であり、教育中断の弊害もまた同様であるから、結論を変える必要はないのではないか。「自分から言わなかったのだから、教育中断は自業自得」というのは、行き過ぎた評価に映るし、少年事件にはそぐわないだろう。
(弁護士 金岡)

















