本欄では、本欄2025年5月10日「検察もひどいが弁護人も輪をかけて・・」を始めとして、他の弁護活動を批判的に考察し、紹介することも割と行っている。あるべき弁護水準を議論する上では、この種の営みを避けて通ることは出来ない。

さて、近時、受任した痴漢事件の控訴審である。
被害者は着衣の上から臀部を触られたと主張し、被告人は、やっていないと主張する。

原審弁護人に記録の引き継ぎをお願いして、届いたものを見ると、「証拠開示の遣り取りはしていない」とある。
驚きである。
被害者供述だけでも、全供述経過を洗い出す必要があるのに、検号証以外の証拠開示の遣り取りをしていないとは。
案の定、被害者立会の再現関係がごっそり抜け落ちている。
勿論、再現をやっていないだけかもしれない。
しかし、開示を求めないのは違うだろう。

更に驚くことに、DNA鑑定、繊維鑑定という定番の証拠もない。
今回の事件の触り方は結構、強いものだったようだから、被害者側着衣からの被告人DNA、被告人の手指からの被害者着衣の繊維の検出は、試みたられた可能性が高いと思うが、それもごっそり抜けている。開示請求していないのだから、あるのかどうかも分からない。
これでは裁判にならない。

原審弁護人の弁論は、2頁と5行である。
仮にも無罪主張で、2頁と5行しか書くことがないということが起こりえるだろうか。
しかも、そのうちの数行を割いて、(検察官が罰金求刑なのに)予備的主張として早期社会復帰のための執行猶予の主張がされているという、おまけつきである。

経過を見るだけで、5段階評価で「6以上」の不適切弁護だと思う。
このような国選弁護人による弁護により、憲法の保障する弁護人選任権の要請が全うされているとは到底、考えられない。高野隆弁護士が、国選弁護人を選択できるようにしなければならない趣旨の論稿を出されていることは、本欄2023年5月29日にて軽く紹介したが、やはり慧眼の至りである。

(弁護士 金岡)