弁論再開決定に対する、と題したが、ここで考えているのは、刑訴法420条1項で原則抗告ができないとされている「裁判所の訴訟手続に関し判決前にした決定」の中でも、刑訴法309条1項の「証拠調に関し異議を申し立てることができる」にも入ってこないような決定に不服の場合、どうすべきか、ということである。
実践的な結論としては、309条1項の異議と、いきなりの特別抗告を同時並行で出す、ということになりそうである。理論的にはそうかなと思っていても、同時並行で出すというのも、いきなり最高裁に持ち込むというのも、予め考えておかないと盲点であろう気がするので、ここに検討経過を記す。

例えば弁論再開決定は、「裁判所の訴訟手続に関し判決前にした決定」であり、特別の規定もないから、抗告の対象ではない。
不服があれば異議を申し立てたいところだが、裁判所の決定なので少なくとも309条2項は使えない。
かたや309条1項は、「証拠調」という縛りがある。
もっとも解説書によれば、この「証拠調」の概念は、逐条刑訴だと「証拠調べの段階における、すべての訴訟行為」であるとされており、更に整理手続段階にも拡張されているから、とても広く、弁論再開してやることは当然、証拠調べに関する訴訟行為なのだから、弁論再開そのものも309条1項の異議の対象になる、と考えたいが、おそらく実務的にこのような考え方は主流ではないだろう(裁判所によって、弁論再開決定や弁論再開を行わない決定に309条1項の異議を出すと、却下するところと棄却するところがあるので、説が分かれているのかも知れないし、そうでないのかもしれないが、良く分からない)。

ここまでで、弁論再開決定に対する不服があっても、異議も出せない、抗告もできない、となると、「この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令」として特別抗告だけかとなるが、最高裁判所は、「裁判所の訴訟手続に関し判決前にした決定」については原則、特別抗告を認めないとしているので、結局、上訴審で救済を求めるしかないという結論に至りそうである。
もっとも、刑訴法433条の解説を見れば分かるように、最高裁判所は、「裁判所の訴訟手続に関し判決前にした決定」についても結構な種類の例外を設けて特別抗告を認めているので、弁護人としては、特別抗告を諦めるのは早計である。
加えて、不適法な特別抗告でも、それを端緒に職権で救済が得られる場合も一定数が知られている。その点でも、せめて期間の徒過なく特別抗告を申し立てておく心構えは必要であろう。

以上をまとめると、例えば弁論再開決定に対する不服申立を考えると、309条1項の異議もあり得なくはないが、異議を申し立てて1週間くらいしてから不適法却下された場合に、いざ、特別抗告を出そうにも、当初決定に対する特別抗告は期間制限にかかり、異議却下決定に対する特別抗告は異議申立自体が不適法だから相手にされない、みたいな事態に陥りかねないのではないかということである。

正解としては、いきなり特別抗告は必ず、神経反射で異議を出すにしても特別抗告も同時並行で出しておいて、とりあえず期間制限違反だけは回避しておこう、ということになるのではないかと思われた。

ここまで考えて、研究者にもお伺いを立ててみたところ、ジュリスト通巻1576号の最高裁2020年2月25日決定に対する判例評釈で、検察官が同じ発想で同時並行異議申立をやっている事案があるよということを教わった。
訴訟手続再開決定に対する検察官からの特別抗告申立事案で、最高裁判所は、即時抗告に代わる異議が出来るので、特別抗告は不適法だと判断した事案だが、検察官の申立書にわざわざ、異議の対象かどうかが分からないので同時並行で特別抗告に及んだと書かれていたとのことである(石田教授の評釈)。

なるほど奥が深い(評釈の、本体ではなく検察官の申立方法に言及した部分まで頭に入っている研究者の知見にも畏れ入る)というか、ここまで考えて実践することはなかったなと思ったが、先例があるなら、言うこと無しである。

(弁護士 金岡)