本欄2025年9月18日において、「無罪が確定しても検察庁は嫌疑を主張できるのか」と題する掲載をした。
袴田再審の畝本検事総長談話や、私が担当している被疑者補償案件を題材に、無罪を確定させておきながら、「有罪であるべきだ」「嫌疑は残っている」等と検察官が言い続けることが許されるのかを問うたものである。
これに関し、最近報道された、名古屋地裁の案件がある。
強盗殺人・死体遺棄で起訴されたAと、死体遺棄の共犯のみで起訴されたBがいる。
別々に起訴されて別々の裁判体に係属したが、先行したBは共謀が否定され、無罪となった(この弁護活動については、季刊刑事弁護125号所収の兼村弁護士の刑事弁護レポートで読むことができる)。無罪判決は控訴なく確定した。
で、Aの方は、2026年のこの程、審理入りしたのであるが、検察官は、依然として、BがAと共謀して死体遺棄した、という公訴事実を維持したままであり、Aの弁護人も死体遺棄の共犯を認めたので、Bの無罪確定後のAの公判において、Bが死体遺棄の共犯であることは言わば争いのない事実と化した。
死体遺棄に関するBの共犯が争いのない事実と化したところで、裁判所はBの尋問を職権で採用し(ということは、裁判所は争いのない筈のBの死体遺棄の共犯性を審理する必要性を認めたと言うことになるのではないか)、尋問が行われた。
このことは幾つかの報道がされているが、例えば中京テレビは「無罪が確定したのに“共犯扱い”」の見出しと、「無罪が確定したにもかかわらず、Bさんを“共犯者”としたまま、Aの裁判が続くことになった」等の内容で報じ、検察官がB尋問で「(死体のあった現場に)入りましたか」などと尋問したことを紹介している。
さて、一般論として言えば、AとBの公判では証拠関係が異なるから、合一確定が望ましいとしたところで、異なる展開になり得ることはあり得る。B尋問を職権採用した裁判所が、「このままBを共犯認定して良いのか」という問題意識を持っているのかは分からないけれども、究極、煎じ詰めれば裁判所にはどうしようもない領域である。
しかしこれに対し検察官は、主張立証責任を負う立場上、いかようにも操作出来るわけであり、具体的には、Bの無罪が確定した以上、余所の裁判でBの有罪を主張立証を行わない選択も可能である。
今回の場合、Bからすれば、「Bは合理的疑いを超えて死体遺棄の共犯である」という事実を、公開の法廷で摘示されるわけであり、無罪が確定している立場に照らすと、名誉毀損であろう(真実相当性がないし、公益目的も怪しい)。また、Bが死体遺棄の共犯であることを前提とした訴因を維持することが、別異の不法行為を構成するように思われる。
検察官が公益の代表者として、確定無罪に服しなければならない立場であることを前提とすると、検察官が確定無罪に反する行動を行うことは、民事刑事上、違法なものとして取り締まる必要があるのではないか。
袴田事件、うちの被疑者補償、そして今回の死体遺棄と、ごく短期間に何度もこのような出来事が起きているのは不可思議であるが、これを機に、きちんとした解決を与えたい問題である。
(弁護士 金岡)